坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼

【坂口正大元調教師のG1解説】1頭1頭の個性を見極めた高野厩舎の完璧ワンツーフィニッシュ

1頭1頭の個性を見極めた、高野厩舎の完璧な采配でした。トライアルの紫苑Sを快勝したスタニングローズと、オークス3着から直行したナミュール。2頭出しで、見事なワンツーフィニッシュでした。

秋華賞ではここ4年、オークスから直行した馬が4連勝していました。トライアルを使わないローテが今やトレンドです。とはいえ、使うことが「悪」ではありません。馬によっては使った方がいい場合ももちろんあります。

スタニングは休み明けの紫苑Sがプラス14キロ。数字でも勝利でも成長を示し、本番の今回は増減なしでした。カイバ食いがいいという談話を見ましたが、使っても減らない、しっかり調教を積んで上積みを持って本番へ向かえると厩舎が判断したのでしょう。

一方のナミュールはオークス以来でプラス20キロ。ふっくらしてすばらしい成長度でした。もともと小柄ですので、トライアルを使った後に下降気味にならないかと気を使うくらいなら、こちらは直行がいいと判断したのでしょう。オークス2、3着馬を違うローテで秋華賞1、2着へ。繰り返しますが、見事でした。

スタニングの鞍上・坂井騎手にも拍手です。早くから積極的に海外へ出て経験を積み、ここ数年、めきめきと腕を上げてきました。内を開けないオーストラリア仕込みの乗り方であったり、今回もですが、序盤からいいポジションを取りに行く姿勢が目を引きます。好位を確保し、4角をタイトに回り、完璧なタイミングで抜け出しました。

牝馬3冠を狙ったスターズオンアースは3着に敗れました。敗因は出遅れに尽きます。道中は最後方付近。1000メートル通過が59秒7と流れが落ち着いたため、動きようがありませんでした。ルメール騎手はさすが慌てず、腹をくくって直線勝負で馬群を縫いましたが、3着が精いっぱいでした。普通に出て中団だったなら・・・。能力は最上位ですが、今回は運がありませんでした。ただ、軽度とはいえ骨折明けでここまで仕上げた陣営は大したものだと思います。(JRA元調教師)

直線抜け出して秋華賞を制したスタニングローズ(左)。坂井騎手はうれしいG1初制覇(撮影・白石智彦)

直線抜け出して秋華賞を制したスタニングローズ(左)。坂井騎手はうれしいG1初制覇(撮影・白石智彦)

スタニングローズで秋華賞を制し、坂井騎手(左)を抱きしめる高野師

スタニングローズで秋華賞を制し、坂井騎手(左)を抱きしめる高野師

 [2022年10月16日]

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