明日への伝言

G1・38勝、角居勝彦師「厩舎経営はチーム作り」

「世界のスミイ」の経営哲学とは-。連載「明日への伝言 先人から競馬界の後輩へ」引退調教師編は、今週から2回連載で角居勝彦調教師(56)が登場する。36歳の開業時から「世界に通用する馬づくりと人づくり」を掲げ、現役最多の国内外G1・38勝(地方含む)を挙げた。前編では厩舎経営について持論を展開した。【取材・構成=太田尚樹】

調教師は経営者でもあります。厩舎を開業する前から、いろんなリーダーの方々の著書を読みました。やはり経営者は理想や夢を持って、従業員より1歩前を進まなければなりません。

ちょうど20年前に開業した時から「世界に通用する馬づくりと人づくり」を掲げて取り組んできました。昔は腕利きの助手や厩務員に馬づくりを任せておけばいいという風潮で、厩舎ではなく個人で馬をつくる時代でした。自分ならではの技術は“企業秘密”として他人へ教えることはほとんどありませんでした。

ですが、厩舎全体にとってはチームワークが大切です。個人のノウハウをスタッフ全員で共有できれば、いわゆる「厩舎力」が上がります。教える側も自分の技術を言葉にして伝えたりすることで、ステップアップにつながるでしょう。技量、知識、吸収力などは、個人によって差があります。互いに助け合う環境をつくることが、人を育てるポイントだと思います。

ウチの厩舎ではスタッフを調教班・カイバ班・業務班と3つのグループに分けていました。私が助手時代に所属していた松田国英厩舎で取り入れられていた役割分担を参考にさせてもらいました。1人1人に担当を割り当て、スタッフ全員でチームを形成するためです。一般企業のように配置転換もやりました。その担当で7割ぐらい仕事ができるようになった段階で別の担当へ替え、新しい環境でさらに成長できるようにしていました。

たとえ雑務であっても、厩舎の仕事に変わりはありません。掃除やゴミ捨ても立派な役割の1つです。国内外を問わず、オーナーは汚い厩舎にいい馬を預けようとは思わないはずです。ささいなことでも直していかなければなりません。

ミーティングは毎日開きました。これも松田厩舎で学んだもので、チーム内の情報共有には欠かせません。開業当初はまだ競馬界では珍しく、私が話している時にスタッフが横を向いたりして、なかなか話を聞いてもらえませんでした(笑い)。ミーティングでは私だけでなく、みんなが発言します。馬に乗った感触を言葉にするのは簡単ではありません。そこで馬のイラストを印刷して、イメージが伝わりやすいようにしていました。

言葉の難しさは、マスコミに対するコメントでも感じました。取材対応を担当するスタッフも置いていましたが、会見などで私自身が発言する時も多くありました。自分の言葉が記事や映像になって広まると、知らないうちに意図しない形で誰かに嫌な思いをさせてしまうことがあります。人を傷つけないように注意していました。

幸いにも馬たちが頑張って結果を出してくれたことで、人づくりがうまくいったというのはあります。一方で、成績が良くなくても人の成長につながることがありますし、必ずしも結果がすべてではありません。馬づくりも人づくりも難しく、答えのないものだと思います。(つづく)

◆角居勝彦(すみい・かつひこ)1964年(昭39)3月28日、石川県生まれ。競馬に縁のない家庭に育ったが、牧場勤務を経て86年に栗東トレセンで調教助手に。00年に調教師免許を取得して翌01年に厩舎開業。07年に牝馬ウオッカでダービーを制覇。11年にヴィクトワールピサでドバイワールドCを勝利。11~13年にリーディングを獲得。JRA通算5509戦762勝(21日現在)。JRA重賞82勝。G1はJRA26勝、海外5勝、地方7勝の計38勝。引退後は石川県で天理教の布教所を継ぐ。

01年3月24日に初勝利を飾った角居調教師

01年3月24日に初勝利を飾った角居調教師

13年、エピファネイアで菊花賞を制し、福永騎手(中央)に抱きつく鈴木助手。右は角居調教師

13年、エピファネイアで菊花賞を制し、福永騎手(中央)に抱きつく鈴木助手。右は角居調教師

 [2021年02月23日]

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