凱旋門賞に追加登録ファンタスティックムーンが直線勝負か 鞍上ピーヒュレクは恩返しの舞台
今年の凱旋門賞は15頭立てになりました。エイダン・オブライエン厩舎は出走馬を英セントレジャーの勝ち馬コンティニュアスだけに絞り、前走、G2ニエル賞を快勝のファンタスティックムーンが12万ユーロ(約1860万円)の追加登録料を支払って参戦に踏み切りました。
急きょ出走を決めたファンタスティックムーンとは何者か? ここでは、そのプロフィルを紹介することにしましょう。
ファンタスティックムーンは、ドイツで組織された共有馬主法人のリバティレーシング2021が所有するドイツ産馬です。一昨年9月のBBAGイヤリングセールで、4万9000ユーロ(約760万円)で同社に落札され、凱旋門賞馬のデインドリームなどを育てたドイツの大御所ペーター・シールゲン師のもとで修業した女性調教師のサラ・シュタインベルクが管理。そのパートナーのレネ・ピーヒュレク騎手が、デビューから7戦のすべてで手綱を握っています。
デビューは昨年9月にミュンヘン競馬場で行われた一般戦(芝1400m)で、重馬場をものともせず優勝。2戦目のG3ヴィンターファヴォリテン賞(ケルン、芝1600メートル)を制してエリートコースに乗りました。オフを挟んで今シーズン初戦となった5月のG3バーバリアンクラシック(ミュンヘン、芝2000メートル)は急仕上げもあって3着でしたが、中2週で臨んだG3ダービートライアル(バーデンバーデン、芝2000m)では早め先頭から押し切って2着に4馬身半差をつけました。
3番人気で迎えたG1独ダービー(ハンブルク、芝2400メートル)は20頭立て。不利な外枠(16番枠)から出たファンタスティックムーンは大きく離れた馬群の最後方を追走。直線に向くとピーヒュレク騎手が大外に馬を持ち出す奇襲戦法で先行馬を一気に逆転、凱旋門賞に出走するミスターハリウッドに2馬身1/4差をつけてドイツ3歳馬の頂点に立ちました。
父のシーザムーンも14年の独ダービーを大外ぶん回して完勝(2着に11馬身差)していて、父子がまったく同じ勝ち方をしたことが話題になりました。シュタインベルク師は独ダービー154回目にして初めて制した女性トレーナーです。
その4週後に行われた古馬混合のG1ダルマイヤー大賞(ミュンヘン、芝2000m)は英国から遠征したネイションズプライド(牡4、父テオフォロ)の2着。距離も微妙に影響したようです。陣営はその後、9月3日(日曜)のG1バーデン大賞(バーデンバーデン、芝2400m)をめざしましたが、散水されて馬場が軟弱になることを知ったシュタインベルク調教師が、不向きと判断して回避。プランを切り替えてフランスに赴き、G2ニエル賞の勝利につなげました。
前述の父シーザムーンはデビューから4連勝で独ダービーを制した名馬。その父のシーザスターズは09年の凱旋門賞馬で、フクムの父、オネストの母の父となっています。ファンタスティックムーンの近親には16年のG1仏ダービーなどを制して、全欧最優秀3歳牡馬に輝いたアルマンゾルがいて、6代母ダラマは繁殖牝馬として日本に輸入され、その孫に音無秀孝騎手(現調教師)を背にオークスを制したノアノハコブネを出しています。
前走のように早め早めの競馬も出来ますが、今回は控えて直線勝負に懸けるものと見られています。トルカータタッソーで、あっと言わせたピーヒュレク騎手にとっては9月に急逝した恩人ミナリク騎手への恩返しの舞台ともなっています。
筆者の評価は▲、直線もつれれば優勝まであり得ると見ています。ここでの結果次第でジャパンカップ参戦も見えてきそうです。
(ターフライター奥野庸介)
※競走成績などは9月29日現在

鈴木淑子さん、ラジオNIKKEI山本直アナとパチリ!

岡田牧雄さん(左)とパリロンシャン競馬場でパチリ!
[2023年09月29日]

- 奥野庸介
- 奥野庸介(おくの・ようすけ)1955年(昭30)北海道小樽市生まれ。79年に有限会社サラブレッド・インフォメーション・システムに入社。海外の競馬情報を日刊スポーツや週刊競馬ブックなどに提供している。現代表。
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