世界トップジョッキー達の「むちの持ち替え」に注目

こんにちは。今週は6日行われた凱旋門賞についてお話ししたいと思います。最後の直線の攻防でジョッキーたちのむちの使用回数がかなり少ないことに気付かれましたか? その理由は、現在フランスではむちの使用回数が5回までに制限されているからです。私も騎手時代はむちの制限について具体的な数字は定められていませんでしたが、それでも使用過多にならないようにと気をつけていました。

一方で、競馬ファンの方々から見ると、もう少しむちを使った方が馬が速く走るのではと考える方もいるかもしれません。では、なぜ今回の凱旋門賞ではむちの使用が多くなくても熱い攻防が見られたのか? それはむちの使用回数以上に外国人騎手が大切にしていることがあるからではないかと私は考えています。

レースに騎乗する上でむちの使用回数以上大切になってくること、それはむちの「左右への持ち替え」です。むちを素早く左右に持ち替えることは、騎手の瞬時の判断とテクニックが必要になります。特に最後の直線では馬が疲れて左右にフラフラとよれやすく、馬をより真っすぐ走らせるためにも必要な動作です。馬を速く走らせる上で最も重要なのはしっかりと真っすぐ走らせることなので、むちの持ち替えがいかに効果的に行われるかは勝敗に大きく関わります。

また、馬によっては馴致(じゅんち)を受けている時や競走馬になるための育成を受けている際に、関わる人の多くが右利きであるために自然と右鞭で教わることが多くなり、右側をむちでたたかれることに慣れすぎてしまう場合もあります。そのような馬はレース中右側でたたかれても無反応で、左側でたたかれると急に反応する可能性があるので、騎手心理として1度は確認したいと思います。

基本的に、国内外を問わず、トップジョッキーたちは総じてむちの持ち替えがとても速いです。中でもそのうまさがに目立つ騎手はモレイラ騎手、デットーリ騎手、ペリエ騎手です。彼らは馬を追う動作を止めることなくむちを持ち替える事ができるので、いつ持ち替えたのか簡単には分からないほどです。日本人騎手では川田騎手、武豊騎手、横山典騎手、ルメール騎手がかなりのテクニシャンだと思います。

今年の秋は、世界最高峰のトップジョッキーが日本に集まるので、ファンの皆さまには、むちの使用回数以上にどれほど速くむちを持ち替えているのか。またどのようなタイミングで行っているのかに注目していただければ、より競馬への理解を深めていただけると思います。

最後に私事ですが、メルボルン遠征中の日本馬取材のため、14日から27日までオーストラリアに行ってきます。次週はメルボルンから日本馬の最新情報をお伝え出来ればと思います。お楽しみに!(レースホースコーディネーター)

ゴール前、追うクリストフ・ルメール騎手(2019年9月7日撮影)
ゴール前、追うクリストフ・ルメール騎手(2019年9月7日撮影)