【スプリンターズS】末脚に磨きがかかったタイセイビジョン コース替わりは歓迎/水島コラム

スプリンターズSは差し・追い込み馬が台頭する。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、小倉の短距離重賞で連続2着のタイセイビジョン(牡5、西村)に注目した。

CBC賞、北九州記念とも高速決着で届かなかったが、先行有利の競馬で連対したように、自慢の末脚には磨きがかかった。平たんからゴール前に急坂のある中山に替わり、逆転の目はないか探った。

北九州記念で2着のタイセイビジョン(右奥)。左は勝ったボンボヤージ
北九州記念で2着のタイセイビジョン(右奥)。左は勝ったボンボヤージ

■昨年痛い不利12着

小倉で行われた前哨戦2戦は、タイセイビジョンにとって不利な条件だった。CBC賞(3回1週目、7月3日)はテイエムスパーダが1分5秒8の驚異的なレコードで逃げ切った超高速馬場。しかも勝ち馬とは9キロのハンデ差(57キロ対48キロ)があり、あの3馬身半差は度外視していい。川田騎手が4角からうまく内を立ち回ったが、あれ以上はどうしようもなかった。

前走の北九州記念(4回2週目、8月21日)は開催が進んで少し時計はかかったが、それでもボンボヤージの勝ち時計は1分6秒9と速い。後方から追い込む馬には厳しいコンディションで、当時も勝ち馬とは6キロの重量差があった。外が伸びる馬場だが、それでは届かない。やむを得ず内に潜り込んでの0秒2差、上がり最速33秒3は高いスプリント能力の証明だ。

今回は3走前の春雷Sで2着の中山1200メートルに替わる。この時も1分7秒3で走っており、決して速い時計の決着が駄目というわけではない。同じ時計でも前が残るか、追い込みが届くか。コース形態によって大きく違う。春雷Sも上がりは32秒8。直線の坂でも加速できるタイプだけにコース替わりは歓迎だ。軽快なスピードを武器にする馬の脚が鈍れば、よりチャンスは広がる。

22年9月22日、福永騎手を背に追い切りへ向かうタイセイビジョン
22年9月22日、福永騎手を背に追い切りへ向かうタイセイビジョン

昨年のスプリンターズSにも挑戦して12着だが、スタート直後に他馬にぶつけられて最後方まで下がる不利が痛かった。上がりはメンバー最速の33秒2で、スムーズなら上位争いになっていただろう。あれから1年。さらに力をつけた今なら、G1は手の届くところにある。

■前哨戦とは傾向一変か

【ここが鍵】

前哨戦が行われた中京、小倉は極端に時計が速かった。メイケイエールが好位から抜け出した中京のセントウルS(2着は2番手追走のファストフォース)は1分6秒2のレコード。小倉の北九州記念も1分6秒9。7月のCBC賞ではテイエムスパーダが1分5秒8の日本レコードで逃げ切った。つまり前が止まらない「先行天国」だった。

中山も開幕週はセプテンバーS(3勝クラス)で1分7秒6の速い時計が出たが2、3週目は台風の影響もあり、道悪で芝はかなり踏み荒らされた。今回、仮に良馬場で行われても「行ったもの勝ち」だった前哨戦とは傾向が一変する可能性がある。快速馬テイエムスパーダがハイペースで飛ばせば、それこそ差し・追い込み馬が浮上するシーンを考えておきたい。

■ウインマーベル、急上昇3歳

ウインマーベルは春後半から夏にかけて成長した。1200メートルの最速タイムは1分8秒2と高速決着に不安を残すが、流れに応じて、どんな競馬でもできるのが強みだ。中山の芝は初めてで急坂を克服できるかがポイントになるが、上昇著しい3歳馬で伸びしろはある。キーンランドCは自分から勝ちにいく競馬をしての2着で価値は大きい。

■トゥラヴェスーラ、7歳にして本格化

<高松宮記念>

トゥラヴェスーラは7歳になって本格化した。春の高松宮記念4着は重馬場で時計がかかったのもよかったが、首+鼻+首の接戦に持ち込んだ。ベストは1400メートルのような気もするが、狭いスペースを突いてくる器用さがあり、立ち回りひとつで上位争いに加われる。道悪巧者とまではいかないが、距離を考えると少し渋った方がいい。

■ヴェントヴォーチェ新しい一面

<キーンランドC>

キーンランドCを制したヴェントヴォーチェは、新しい一面を見せた。ダッシュがつかず後方からの競馬になったが、直線は馬場の内めを進出。いい決め手を発揮して突き抜けた。春雷Sでは好位差しの競馬で1分6秒8の好時計勝ち。極端に前が残るようなスピード競馬では厳しいが、ゴール前もつれて末脚の生きる展開ならG1でもやれる。