【宝塚記念】重心低く切れ出たディープボンドが残るサバイバル戦/水島コラム

宝塚記念は逃げ、先行馬がそろった。高速馬場の阪神でスローペースはありえない。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、天皇賞・春2着ディープボンド(牡5、大久保)に注目する。前走はペースアップした3~4コーナーで手応えが怪しくなったが、それでも連対は確保。中距離の消耗戦なら巻き返しがある。

天皇賞・春で2着だったディープボンド(右端)。左端は勝ったタイトルホルダー
天皇賞・春で2着だったディープボンド(右端)。左端は勝ったタイトルホルダー

■ディープボンド緩急差ない平均ラップなら巻き返し可能

ディープボンドは阪神大賞典、天皇賞・春とも3角過ぎで手応えが怪しくなった。和田竜騎手が手綱をしごいて直線は盛り返しているが、ズブさを見せたのは「緩→急」の差が激しいことが原因だった。

阪神大賞典は残り1000メートルから(12秒6)→11秒9。一気に0秒7も速くなった。また、天皇賞・春も残り1200メートルから(12秒9)→12秒3。さらに12秒0―11秒9―11秒5と逃げたタイトルホルダーがペースを上げた。もともと素早くギアチェンジができる馬ではなく、トップスピードに入るまでに時間がかかる。

つまり、勝ち馬のロングスパートについていけなかったのが敗因だ。一方、有馬記念2着の後半1000メートルは12秒4―12秒4―12秒2―12秒0―12秒5。緩→急差は最大で0秒2。平均に速い流れでしぶとさを発揮した。エフフォーリアには差されたがクロノジェネシス、タイトルホルダーに先着。流れひとつでG1に手が届くことを証明した。これまで3000メートル級で結果が出ているのは速い脚がないから。典型的なステイヤーというより中・長距離の消耗戦に強いタイプ。今回はその条件に合った展開が見込める。海外遠征を経験し「重心が低くなって切れが出た」と和田竜騎手は証言するが、これもスタミナ比べになった時に生きる。前傾ラップのサバイバル戦は望むところだ。

3000メートル以上を2戦したが1週前の動きから疲れはない。大久保師も「前走がピークかと思ったが、まだ上昇の余地が残っていた」と話す。状態はいい。メリハリ(緩急差)のない平均ラップになれば、悲願のG1制覇に大きく近づく。

悲願のG1制覇を狙うディープボンド
悲願のG1制覇を狙うディープボンド

■瞬発力より末脚持久力

【ここが鍵】

今年はパンサラッサの出方が勝敗を左右する。前走のドバイターフは後続を引きつけて粘ったが、中山記念(1着)を1000メートル57秒6で飛ばしたように、本来ため逃げするタイプではない。この馬をタイトルホルダー、アフリカンゴールドあたりが追いかければ、平均に速いラップが刻まれる。

特に今開催の阪神はマーメイドS(2000メートル1分58秒3)、米子S(1600メートル1分32秒9)など高速決着の前残りが多い。となれば、各馬とも積極的にポジションを取りにいく。レース中盤でペースが緩むことは考えにくい。速い流れの消耗戦になれば、瞬発力より末脚の持久力に優れた馬が浮上する。

■ヒシイグアス脚質が魅力

<大阪杯>

大阪杯4着のヒシイグアスは、暮れの香港以来で調整の難しさもあった。直線で少しもたれたのも、その影響か。それでも3角から外をまくってきた脚に見どころがあった。長く脚を使えるタイプで、消耗戦にも対応できる。前でも後ろでも自在に立ち回れる脚質も魅力。香港Cでラヴズオンリーユーを短頭差まで追い詰めた脚力はG1級。中間は順調に乗り込まれており前進が見込める。

■アリーヴォ持久戦歓迎

<大阪杯>

アリーヴォも持久戦になった方がいい。大阪杯(3着)は馬群を割って鋭く上位に迫ったが、2走前の小倉大賞典では大外を回って豪快に差し切った。一戦ごとに力をつけて、以前苦にしていた直線の坂を克服できたのは大きい。今の充実ぶりならG1でも引けは取らない。それほど切れるタイプではなく、前がやり合って上がり時計がかかるのは歓迎。この馬も消耗戦を味方にできるタイプだ。