【ヴィクトリアM】デゼル距離短縮で波乱起こす!?中距離G1出走でスタミナ強化/水島コラム

ヴィクトリアマイルは距離を短縮してきた馬が波乱を起こす。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は阪神牝馬S3着デゼル(牝5、友道)に注目した。昨秋のエリザベス女王杯(芝2200メートル)8着後、愛知杯(芝2000メートル=3着)、阪神牝馬S(芝1600メートル)をステップに調子は上向き。中距離をこなす体力とマイル向きの瞬発力が、得意の東京で生きないか検証する。

阪神牝馬Sで3着だったデゼル
阪神牝馬Sで3着だったデゼル

■デゼル瞬発力マイルで生きる

阪神牝馬Sのデゼルはレースぶりに進境がうかがえた。逃げたクリスティの1000メートル通過は58秒1。この流れを中団やや後ろで追走した。2走前の愛知杯では前半62秒3のスローペースでも行きっぷりはいまひとつ。向正面は12番手だった。もちろん距離、コースの違いはあるが、前半で4秒2も速い流れについていき、しまい33秒7の脚を使えたのは、それだけ体力がついた証拠だろう。

もともと瞬発力には定評があった。3歳時のスイートピーSでは、上がり32秒5の驚異的な末脚で差し切り勝ち。決め手はG1でも通用する。実際、昨年のヴィクトリアマイル(8着)でもグランアレグリアには離されたが、2着ランブリングアレーとは0秒2差。上がり3ハロンは33秒2の脚を使った。ただ、スローの追い込み馬という印象が強く、流れに乗った競馬ができるか。それが課題だった。

陣営も試行錯誤を繰り返し、昨秋の府中牝馬Sでは先行策を取り、エリザベス女王杯では長い距離を試した。ともに結果は良くなかったが、いろいろな経験を積むことでフィジカルも強くなった。それを証明したのが阪神牝馬Sだ。川田騎手が「これまでで一番バランスが良く、いい走りをしていました」と言うように、直線は右にもたれる癖も見せず、真っすぐ伸びた。5歳を迎えて完成の域に近づいたとみていい。

中距離G1でスタミナ面を強化。そこから徐々に距離を詰めて、マイルの速い流れにも対応。ようやく非凡な素質に体力が追いついた。いいローテで迎える2回目のマイル女王決定戦。首位争いに絡む可能性は大いにある。

■徐々に距離縮めて好走例目立つ

【ここが鍵】

中・長距離G1(重賞)から徐々に距離を詰めてヴィクトリアマイルに臨んできた馬の好走例が目立つ。20年アーモンドアイ、21年グランアレグリアは傑出した能力があり当てはまらないが、19年ノームコアはエリザベス女王杯(芝2200メートル=5着)→愛知杯(芝2000メートル=2着)→中山牝馬S(芝1800メートル=7着)をステップに5番人気で勝利した。

また、18年ジュールポレールはエリザベス女王杯(16着)→阪神牝馬S(芝1600メートル=5着)を経て、穴をあけている。さらに昨年2着だったランブリングアレーも愛知杯(2着)→中山牝馬S(芝1800メートル=1着)からの好走だった。東京芝1600メートルはタフなコース。中距離G1、もしくは牡馬混合重賞でスタミナ(体力)をつけ、速い流れにも対応できる馬に穴の資格がある。

■テルツェット追走楽になれば切れる脚

<中山牝馬S>

中山牝馬S5着のテルツェットはスタートがひと息で、勝負どころでの反応も悪かった。エリザベス女王杯で折り合い重視の競馬をさせた分なのか、緩急の切り替えがうまくいかず。完全に脚を余していた。それでも上がりはメンバー最速の34秒0。これまでマイルは【4001】。東京で追走が楽になれば、しまい切れる脚が使える。

■ファインルージュ前走選択プラス

<東京新聞杯>

ファインルージュは桜花賞後、オークス、秋華賞と3歳牝馬の王道を歩んできた。2000メートル以上の距離を意識した調整、乗り方をしてきたが、ここへ向けて東京新聞杯(1600メートル)を選択したのはプラス。窮屈なところに入り、仕掛けが遅れた分の2着。スムーズなら勝ち負けになっていた。本番と同じ舞台。いいイメージで臨める。

■アンドヴァラナウト福永好感触

<阪神牝馬S>

アンドヴァラナウトは阪神牝馬Sで5走ぶりにマイルを使った。3番手から2着を死守。福永騎手は「やはり距離は合う」と好感触を得ていた。2000メートルでは少し力む面があり、流れが速くなるのは歓迎。馬場のいい内を通ったこともあるが、適性を示すには十分な内容だった。今度はもっと流れにも乗れるはず。前進があっていい。