【NHKマイルC】減点材料少ない総合力のマテンロウオリオン/水島コラム

NHKマイルCは各路線からメンバーが集まる。前哨戦のニュージーランドT(NZT)に皐月賞、桜花賞、アーリントンC。能力比較は難しいが、水島晴之「G1の鍵 その一瞬」はNZT2着マテンロウオリオン(牡、昆)に注目した。どんな競馬でもできる自在性に、瞬発力を兼ね備えて減点材料が少ない。その「総合力」の高さを検証する。

ニュージーランドTを制したジャングロ(左)と2着マテンロウオリオン
ニュージーランドTを制したジャングロ(左)と2着マテンロウオリオン

■マテンロウオリオンのスピード!瞬発力!勝負強さ!

NZTのマテンロウオリオンは、負けてなお強しの内容だった。誤算があったのは流れが緩んだ3コーナー手前。少し行きたがるそぶりを見せたため鞍上が手綱を押さえると、外からまくられてポジションが下がった。その影響で4コーナーでは5、6頭分外を回るロスがあった。それでも直線の坂を駆け上がってくる時の反応は鋭く、一気に先頭のジャングロに並びかけた。

最後は休み明けと大外を回った分。逃げて最内を通った勝ち馬に頭差なら悲観することはない。その前走は中団から追い上げる正攻法の競馬をしたが、2走前の日刊スポーツ賞シンザン記念は3番手から内ラチ沿いを抜け、3走前の万両賞では出遅れて離れた最後方から大外一気を決めた。横山典騎手が試していることもあるのだろうが、狭いスペースを突く勝負根性があり、ためれば33秒台前半の脚も使う。

どんな乗り方でも鞍上の期待に応えられるのは、それだけ対応力がある証拠。レースぶりだけでなくコース替わりや、環境の変化にも動じない。1、2戦は阪神、その後は中京、中山を転戦し、関東圏への輸送も経験済み。左回りでも勝利を挙げている。あらゆる条件に順応する能力は、フルゲート(18頭)のG1でこそ力を発揮する。

一芸に秀でたタイプではないが、スピードも、瞬発力も、勝負強さも、すべてに及第点以上。いわゆる総合力に優れており、東京マイルは合う。昆師が「休み明けだとパフォーマンスが下がるようだ」と話したように、3カ月ぶりを使った上積みも大きい。狙い澄ました東京のマイル戦。混戦になればなるほど、同馬の底力が生きる。

■コース、距離、戦法・・・経験が好走呼ぶ

【ここが鍵】

東京マイル戦はバックストレッチ(向正面)が長く、コーナーも大きい。小回りに比べて息を入れるところがなく、そのまま直線525・9メートルの攻防に入る。単なるスピードや決め手だけでは押し切れない。総合力が必要だ。04年の覇者キングカメハメハは、2000メートルの毎日杯をステップに勝利し、続くダービー(2400メートル)も連勝した。また、18年の優勝馬ケイアイノーテックは先行、追い込みと乗り方を模索しながら結果を残してきた馬。つまりコース、距離、戦法などいろいろな経験を積んでいることが好走の鍵だ。

■東京で威力インダストリア

<弥生賞>

弥生賞5着のインダストリアは、4戦中3戦が1800メートル以上。長めの距離で2着、1着、1着、5着と結果を出してきた。前走は初距離ということで慎重になったのか、少し消極的な競馬だった。しかも、4コーナーでは大外を回る不利があっての0秒3差。もう少し前の位置なら勝ち負けになっていただろう。全4戦のうち3戦が最速上がり、残り1戦は最速タイをマークした瞬発力&スタミナは東京で威力を発揮する。

■大駆けあるソネットフレーズ

<デイリー杯2歳S>

デイリー杯2歳S以来のソネットフレーズは、牝馬ながら牡馬混合重賞でセリフォスと首差の接戦を演じた。直線はいったん馬の後ろへ入れ、そこから進路を内に切り替えて強襲。負けはしたがポテンシャルの高さと、センスの良さを感じさせた。その後、脚部不安でクイーンCを自重して休養したが、順調なら桜花賞でも勝負になっていただろう。過去、牝馬はシーキングザパール、ラインクラフト、ピンクカメオ、メジャーエンブレム、アエロリットで5勝しており、仕上がり次第で大駆けがある。

■我慢覚えたアルーリングウェイ

<桜花賞>

桜花賞8着のアルーリングウェイも、いい経験をした。好位4番手で直線に向いたが、前が壁になって少し窮屈な競馬に。進路ができてからはジリジリという感じの伸びだったが、初めてもまれる形で、プレッシャーを感じていたのかもしれない。エルフィンSではいったん並ばれてから突き放したように切れる脚もある。馬混みで我慢することを覚え、今度は同じ状況でもはじける可能性はある。