1番枠の貯金と早仕掛け、消耗戦読んだ福永の好リード/天皇賞・春

<天皇賞・春>

ワールドプレミアが消耗戦を制した。逃げたディアスティマの前半1000メートルは59秒8。かなりのハイペースだが、外→内回りのコース形態を考えれば、ある程度ついていく必要がある。その中で、いかに体力を温存するかが勝敗の分かれ目。福永騎手は1番枠をうまく生かした。

1周目のスタンド前は7番手。前のアリストテレスを見ながら、内ラチ沿いを進んでいく。1角で外からウインマリリンに並びかけられると、少しペースを上げて前へ出た。いつでも外へ出せるように、外側に馬を置かない。この“1頭ポツン”の状況が、勝負どころで効いてくる。

2角まではアリストテレスの後ろを追走。向正面の中ほど、残り1000メートル付近で外へ出た。「動くぞ」というフェイントをかけることで、後ろから来る馬の動きを封じ、先行勢にプレッシャーをかける。そして、ひと呼吸置いて前へ。仕掛けるタイミングとしては少し早いが、ここまで内を回ってきた貯金がものをいった。

4角は大外を回りながら先頭へ接近。もともと惰性をつけてトップスピードに乗るタイプ。目標にしていたアリストテレスをかわすと、ディープボンド、カレンブーケドールとのたたき合い。福永騎手は「タフな展開で脚は上がっていた」とコメントしたが、スタミナ勝負なら負けない。馬を信じてムチを振るった。

レース序盤は内で目立たず、勝負どころで思い切り動く。静→動への切り替えがうまくいった。勝ち時計は3分14秒7のレコードだが、上がり3ハロンは37秒4の消耗戦。枠順にも恵まれたが、それを最大限生かしたコース取りと絶妙の仕掛け。福永の好リードがワールドプレミアに菊花賞以来2つめのG1制覇をもたらした。

ディープボンドとの接戦を制して天皇賞・春を制したワールドプレミア(2021年5月2日撮影)
ディープボンドとの接戦を制して天皇賞・春を制したワールドプレミア(2021年5月2日撮影)