リモート広まり発信しやすくなったけど 馬の魅力を感じるには実際にふれあうのが一番

<角居勝彦元調教師 Thanks Horse(19)>

コロナ禍に入ってもう2年半になります。私の調教師生活が残り1年になったあたりから始まりましたが、ありがたいことに競馬はずっと開催され、JRAの売り上げも増え続けています。インターネットで馬券を買うファンが増えたのもあるでしょう。

大きな影響としては無観客開催が挙げられます。通常なら、たくさんの人たちの歓声や目線を感じて怖がる馬も多いですが、それがなくなれば精神的に安定しやすくなります。その影響なのか、人気通りに決まるレースが増えたそうです。

今は徐々に入場制限がなくなり、お客さんの数も戻ってきました。そんな中で、最近はG1や重賞で1番人気の馬が苦戦していると聞き、興味深いことだと思いました。無観客に慣れてしまった馬にとっては、人間に見られる環境に戸惑いがあるのかもしれません。

競走馬のセカンドキャリアにも、さまざまな影響がありました。たとえば引退後に乗馬となるためのリトレーニングを受けても、セールで売る時に会場へ人を呼べなくなったことで、実際に馬を見てもらえず売却率が落ちました。今は逆にオンライン化が進み、日本全国からエントリーできるようにもなりました。

このように、コロナ禍の影響は悪いものばかりでもありません。リモート形式が広まったことで、私自身も能登半島という“日本の端っこ”から、いろいろな発信ができています。もともと人口が少ない地域なので、コロナの前も後もあまり実感がないというのはありますが・・・。

牧場でも最近はお客さんに遊びに来てもらえるようになりました。夏は馬との海遊びを楽しんでもらいましたが、気温を考えると今月中旬ぐらいで終わりなので、今度は冬の遊びを考えています。雪が多い地域でもありますから、そりを引かせられないかと思い、今はリヤカーを引いて練習をしているところです。

新しい牧場の方は来年5月のグランドオープンを目指しています。馬の魅力を感じるにはリモートよりも実際にふれあうのが一番ですから、たくさんの方々をお迎えできるように準備を進めていきます。

▼新プロジェクト「みんなのウマ」では引退馬の預託を募集中だ。角居氏は「競走馬や乗馬を引退した馬に、能登で余生を送らせたいという方がいらっしゃれば、ぜひ声をかけていただきたいです」と呼びかける。預託料は月額8万円。

タイニーズファームでは雨よけのシェルターが完成(角居氏提供)
タイニーズファームでは雨よけのシェルターが完成(角居氏提供)