今も余震が続く能登 馬には人を癒やす力がある、こういう時こそ馬を役立てたい

<角居勝彦元調教師 Thanks Horse(36)>

震災からもうすぐ2カ月になります。今も余震は続いていて、珠洲市のホースパークも輪島市の自宅も、まだ水道は復旧していません。牧場では井戸を掘っていただき、今週水曜日の検査で飲み水にも使用できるという結果が出ました。そんな中で馬たちは普段と変わりない様子で過ごしています。

ホースパークの再オープンについては、まだ見通しがまったく立てられていません。牧場の門を開けて馬を見られるようにはしていますが、駐車場にも地割れがあり、なかなか入りづらい状況です。能登の人たちも日々の生活にいっぱいいっぱいで、珠洲の中でも街外れにある牧場まで遊びに行くような余裕はまだないでしょう。県外出身のスタッフは、住んでいた家がつぶれてしまったので、今は一時的に実家へ帰ってもらっています。

まずは水道、エネルギー、道路など、インフラが整わないと何も始まりません。今はまだ、がれきの撤去すらできていないのが現状です。ボランティアの方々も宿泊できる施設がなく、日帰りで滞在時間が限られてしまうので、なかなか作業が進んでいきません。

こうした中で、馬が役に立てることはないか、周りの人たちと相談しながら考えているところです。東日本大震災の時には、心に傷を負った被災者の方が、馬を見ているうちに「俺も頑張ろう」と勇気づけられたことがあったと聞きました。ホースパークの裏には、震災ごみの引き取り場があります。たとえば、ごみを捨てに来た時に、お子さんを牧場へ連れてきて遊んでもらうようなこともできるかもしれません。

馬には人を癒やす力もあります。こういう時にこそ、できることもあるはずです。苦しい中ではありますが、前向きに取り組んでいこうと思います。

牧場でくつろぐちっちくん(角居氏提供)
牧場でくつろぐちっちくん(角居氏提供)