【坂口正大元調教師のG1解説】お見事ムルザバエフ騎手 ドイツで名をあげた理由わかる好騎乗

ただでさえ予想の難しい2歳戦ですが、2000メートルという中距離になればなおさらです。枠順や展開ひとつで結果はガラリと変わります。今回はベテラン横山典弘騎手の絶妙なペース配分と、ムルザバエフ騎手の勝負強さ。これが波乱を呼んだ要因でしょう。

まず、2着に惜敗したトップナイフから話しましょう。横山典騎手が積極的にハナへ導き、1000メートル通過1分1秒5という、極端ではありませんが、スローに近い平均的に遅めの流れを演出しました。一方で、後半1000メートルは1分ちょうど。平均的に速めの上がりを計時し、後ろの馬たちの瞬発力を封じました。見事です。馬も出走馬最多タイのキャリア7戦目。経験豊富な人馬が絶妙なペース配分で逃げ切った・・・という競馬のはずでした。

ですが、勝ったのは2番手追走のドゥラエレーデでした。横山典騎手のペースにうまく乗っかったという面はありますが、2番手という好位を確保したのが1つの勝因です。そして何より、ムルザバエフ騎手の勝負強さでしょう。身長169センチと騎手としては大柄ですが、長い手をうまく使ってダイナミックに追ってきました。馬場の重いドイツで何年もリーディングを獲得しているホープです。疲れてきた馬を動かす技術にたけているのでしょう。数少ないチャンスで勝利という最高の結果を出す。ドイツで名をあげた理由がわかったような気がしました。

3着キングズレインは一番強い競馬をしました。前の馬が上位を占めた中、4角で外に振られる不利がありながら、後方から上がり最速で追い込みました。目立つ脚でしたし、来春が楽しみな1頭です。

1番人気ミッキーカプチーノは5着。大外枠の分、出して行ったことで若干掛かっていました。枠順が違えば結果もまったく違ったと思います。4着ファントムシーフは4角から直線で少しごちゃつきました。流れが遅くなり馬群がばらけないと、最内枠があだになることもあります。やはり2歳戦は難しいですね。(JRA元調教師)

ゴール後、ドゥラエレーデの首筋をなでるムルザバエフ騎手(右)。左は2着トップナイフ(撮影・丹羽敏通)
ゴール後、ドゥラエレーデの首筋をなでるムルザバエフ騎手(右)。左は2着トップナイフ(撮影・丹羽敏通)
表彰式を終えてカメラに向かってポーズを決めるムルザバエフ騎手(撮影・丹羽敏通)
表彰式を終えてカメラに向かってポーズを決めるムルザバエフ騎手(撮影・丹羽敏通)