【坂口正大元調教師のG1解説】あれから20年、ジャンダルムに母ビリーヴが乗り移った

ビリーヴの勝ったスプリンターズSからもう20年です。あの年(02年)は新潟が舞台で、私もサイキョウサンデー(6着)を出走させたのでよく覚えています。ビリーヴはテンからすっと前へ行き、最後もひと伸びするセンスのいいスプリンターでした。今回はまるで、息子ジャンダルムに乗り移ったようでした。

大きな勝因はスタートが決まったことでしょう。すぐ内で立ち遅れたテイエムスパーダが、何が何でもハナという形で押して行ったことで、前半3ハロンは32秒7と速くなりました。そんなハイペースの中で、荻野極騎手とジャンダルムは余裕を持って好位のインへ下げ、4角を持ったままで回ってきました。ハナを争った2頭と好位の外にいたメイケイエールが後退するのとは対照的に、母ビリーヴのように再加速。前崩れのペースで好位から押し切ったのですから、強いのひと言でした。

ジャンダルムが初めて芝1200メートルを走ったのは6歳だった昨年4月です。デビュー2戦目にマイルG2を勝っており、ビリーヴの子とはいえ、ある意味頭を打つまでは、距離を縮める選択肢がなかったのだと思います。一方の荻野極騎手は2年目に47勝を挙げて頭角を現しましたが、その後は徐々に騎乗数も勝ち鞍も減少。昨年は最も落ち込んでいました。そんな状況で出会った人馬のG1制覇もまたドラマです。鞍上はまだ25歳。これからです。ジャンダルムはG1勝ちで種牡馬への道が開けました。

1番人気メイケイエールは14着に敗れました。速いペースは歓迎のはずですが、4角手前で池添騎手の手が動きました。右回りなのか中2週なのか。もともと勝つか4着以下という難しい馬ですが、この結果が実力でないことは確かです。

2番人気ナムラクレアはエールの後ろから外を回った分の5着でしょう。内が残る馬場でしたし、2着ウインマーベルはそこをうまく伸びてきました。3着ナランフレグはさすがG1馬です。1200メートルなら必ずいい脚を使います。(JRA元調教師)

スプリンターズSを制したジャンダルム(左端)(撮影・柴田隆二)
スプリンターズSを制したジャンダルム(左端)(撮影・柴田隆二)
02年、スプリンターズSを制したビリーヴ
02年、スプリンターズSを制したビリーヴ