【坂口正大元調教師のG1解説】光った分析力と実行力 まさに“福永時代”

<坂口正大元調教師のG1解説>

<皐月賞>◇17日=中山◇G1◇芝2000メートル◇3歳◇出走18頭◇5着までにダービー優先出走権

5番人気ジオグリフ(牡、木村)が差し切り、混戦のクラシック1冠目を奪い取った。

分析力と実行力。どちらも備える福永騎手は、今や押しも押されもせぬJRAジョッキーのトップです。“福永時代”と言ってもいいでしょう。鞍上が勝たせた皐月賞でした。

勝利騎手インタビューにありましたが、戦前に立てた作戦の骨子はスタートでした。ペースはスローか、流れても平均程度。勝つためには中団より前のポジションが必須で、ジオグリフが7枠14番という外枠から好位を取るには、スタートを決めて出していく。そう読んだ上で実行します。

その通り、前後半1000メートルずつのラップは60秒2-59秒5とほぼイーブン。1番人気ドウデュースが後方から上がり最速の脚を使いながら3着までだった結果を見ても、勝利には好位の確保が絶対条件でした。5~6番手を取った福永騎手は、同じく外枠から好位を取ったルメール騎手のイクイノックスをすぐ前に見ながら、抜群のタイミングで追い出しました。

野球の投手でもそうでしょう。この打者、このカウントなら、外角低めの落ちる球で抑えられる。そう分析できても、そこに投げられる技術があるかどうかです。単勝10倍を切る馬が6頭もいた混戦だったからこそ、福永騎手の分析力と実行する技術が光りました。

ジオグリフの父ドレフォンは米国の短距離ダートで活躍した馬です。ダービーの2400メートルは微妙かもしれませんが、今回の競馬を見る限り、また同世代同士だと考えれば、こなせる範囲でしょう。何より、距離に対して鞍上がどう分析するのか、楽しみです。

2着イクイノックスは休み明け、初の中山、右回り、さらに大外枠でよく2着にきました。4着ダノンベルーガとともに、次のダービーこその馬でしょう。3着ドウデュースは先述の通り、位置取りが明暗を分けました。ダービーの2400メートルでも走れる馬だと思います。(JRA元調教師)

皐月賞を制し、ファンの拍手にガッツポーズで応える福永騎手(撮影・酒井清司)
皐月賞を制し、ファンの拍手にガッツポーズで応える福永騎手(撮影・酒井清司)
直線抜け出したイクイノックス(左)を、ゴール前捕らえたジオグリフが皐月賞を制した
直線抜け出したイクイノックス(左)を、ゴール前捕らえたジオグリフが皐月賞を制した