【コラム】光った福永祐一騎手プロの腕 スッと好位につけ気難しさ出させず

<坂口正大元調教師のG1解説>

<フェブラリーS>◇20日=東京◇G1◇ダート1600メートル◇4歳上◇出走16頭

馬の気分を害さないように、どう乗るか。私は福永騎手に注目していました。カフェファラオの戦前の成績は【5 0 0 5】。勝つか、着外か。こういう成績の馬は気性が難しいタイプです。ファラオは昨年の覇者で力は一枚上。ただ、その能力を発揮させるには、前半が鍵でした。

スタートしてすぐ、福永騎手は好位へと導きます。サンライズホープ、ソダシ、テイエムサウスダンと前を横切る外枠の馬をやり過ごし、好位の外、砂をかぶらない位置を確保します。ファラオにとって理想的な運びでした。4角では持ったまま。直線は上がり最速34秒3の脚で、粘るソダシ、サウスダンをかわしました。すんなりならこれほど強い。その証明でした。

前走のチャンピオンズCは11着。後方から外を回しましたが、伸びませんでした。気難しさを出させないためには、いかにスッと好位につけられるか。そのポイントを鞍上が見事に遂行しました。12月の香港で落馬負傷した福永騎手ですが、復帰してすぐのG1制覇です。騎手にけがはつきものですし、治療やリハビリは本当に大変だと想像します。ですが、復帰した時は100%。これぞプロの仕事だと感じました。

3着のソダシも戦前の成績は【6 0 0 3】。能力は高いですが、勝ち馬と同じく気難しさもありました。初ダートのチャンピオンズC12着は、最内枠でハナを切り、強豪古馬にマークされた結果でしょう。今回は吉田隼騎手が控える競馬で力を引き出しましたし、何より、もう1度ダートに使った陣営の信念に拍手です。ダートで走る血統的な裏付けがありますし、今後の選択が楽しみです。

2着にはテイエムサウスダンが逃げ粘りました。馬混みでの競馬を身につけてきたところでしたので、岩田康騎手はハナに行きたくなさそうな感じでしたが、時計は速くてもペースはイーブン。抑えすぎるよりは、という一瞬の好判断でした。(JRA元調教師)

フェブラリーSを連覇したカフェファラオと笑顔の福永祐一騎手。右は堀師(撮影・丹羽敏通)
フェブラリーSを連覇したカフェファラオと笑顔の福永祐一騎手。右は堀師(撮影・丹羽敏通)