【コラム】横山武、舞台を熟知した最高の騎乗 4角でジェネシス閉じ込めた

<坂口正大元調教師のG1解説>

<有馬記念>◇26日=中山◇G1◇芝2500メートル◇3歳上◇出走16頭

騎手の成長、馬の成長。横山武騎手とエフフォーリアの来年は、いったいどんな年になるのか。今からもうわくわくしてしまいます。夢が広がる完勝でした。

象徴的だったのは最後の4コーナーです。追い出しを辛抱して辛抱して、前の馬を差し切りました。早く抜け出して、鼻差だけ差されたダービーがよほど頭にあったのでしょう。前走の天皇賞・秋も今回も、冷静な追い出しが光りました。

しかも、その4角では最大のライバル、クロノジェネシスを内に閉じ込めています。向正面まではフォーリアの方が後ろでしたが、外に出して、3角で半馬身ほど前に出て、ふたをしました。直線の短い中山コースで、4角の“踏み遅れ”は致命的です。騎手5年目とは思えない、舞台を熟知した最高の騎乗でした。

ただ、勝利騎手インタビューの第一声は「反省」でした。前日土曜に受けた騎乗停止は、確かにジョッキーとして恥ずかしいことですし、あってはならない騎乗でした。ですが、過ちは誰にもあります。それを反省できる心、気持ちを持っているかどうかが大事です。有馬記念という大レースを勝ちながら、最初に反省を述べたのは、横山武騎手自身がよほど自分に腹を立てていた証拠です。なぜ、あんなことをしたのかと。その気持ちがあればまた成長できると私は思います。

2着ディープボンドは、和田竜騎手が内枠を生かして、ロスなく完璧に乗りました。フォーリアに差されたのは重量の2キロ差が大きかったですね。有馬記念ではこの2キロ差が効きます。

3着クロノジェネシスは前述の通り、4角で閉じ込められましたが、絶好調の同馬ならもっと速い脚を使って抜け出してきたと思います。私の経験からしても、伸び盛りの3、4歳の牡馬に対して、5歳牝馬は状態の維持が精いっぱい。よく頑張ったと思います。引退戦は敗れましたが、牡馬を相手にグランプリを3連覇した戦績はすばらしいのひと言です。どんな子を出すのか、楽しみにしています。(JRA元調教師)

4コーナーを回るエフフォーリア(右から3頭目)はクロノジェネシス(左横ピンク帽後方の青帽)を内に閉じ込めた(JRA提供)
4コーナーを回るエフフォーリア(右から3頭目)はクロノジェネシス(左横ピンク帽後方の青帽)を内に閉じ込めた(JRA提供)