【コラム】グランアレグリア慌てず差し切り、これほどまでに強いのか

<坂口正大元調教師のG1解説>

<マイルCS>◇21日=阪神◇G1◇芝1600メートル◇3歳上◇出走16頭

ルメール騎手の言葉を借りるなら、これが「本当のグランアレグリア」です。良馬場の芝マイル戦ならこれほどまでに強いのか。あらためて実感しました。

ペースはスローでした。前後半800メートルずつのラップは47秒6-45秒0。後半の方が2秒6も速いですから、G1としては相当に遅い流れでした。ですが、アレグリアは中団の後ろ、戦前の予想よりかなり後方でした。果たして届くのか。見る者の心配をよそに、ルメール騎手の手は3角も4角もまったく動きません。

外々を回り、直線も大外へ出して、ようやく追い出しました。上がりは出走馬最速の32秒7。レースの上がりが33秒3ですから、普通は後方の馬が届かない流れをきっちり差し切りました。アレグリアのリズムで走って、直線でいいところに持ち出せば、これだけ末脚が切れる。多少後ろでも慌てず騒がず。能力を信頼しきった騎乗でした。

マイル戦なら、まだまだ第一線で戦えるでしょう。これで引退というのはもったいない気がします。ですが、クラブの規定もありますし、優秀な血を残すこともサラブレッドの使命です。種牡馬とは違い、繁殖牝馬の子は1年に1頭。当たり前ですが、どんなに走った牝馬でも1年に1頭しか生めません。それだけ牝馬の血は尊いのです。アレグリアにもいい子を生んでもらいたいと思います。

2、3着には強い3歳馬が入りました。2着シュネルマイスターは春の安田記念(3着)とは違い、アレグリアより1キロ重い56キロを背負っての好走です。上がりは2位の32秒9。ゲートも良くなっていましたし、確かな成長と能力を示しました。3着ダノンザキッドは発汗が目立ちましたが、そういう性格的な面からしても、マイル路線への転向が合ったのでしょう。この2頭がまた、マイルG1で顔を合わせる時が楽しみです。(JRA元調教師)

ラストランとなったマイルCSで連覇を果たしたグランアレグリア(中央)(撮影・白石智彦)
ラストランとなったマイルCSで連覇を果たしたグランアレグリア(中央)(撮影・白石智彦)