【コラム】うつむくな横山武、ダービー1番人気に乗る騎手も1年に1人

<坂口正大元調教師のG1解説>

<ダービー>◇30日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳◇出走17頭

横山武騎手はエフフォーリアの全能力を引き出しました。鼻差の2着で初めて敗戦を喫しましたが、うつむく必要はありません。

ダービーで今も昔も大事と言われるのが1コーナーです。エフフォーリアが入った最内枠は距離ロスが少ない半面、ごちゃつく危険性があります。横山武騎手がゲートから少し出して行ったのも当然で、好位のいいポジションを取って第1関門をクリアしました。

直線は馬場のいい外へじわじわと出しながら、最後までしっかり追いました。デビュー5年目、ダービーはまだ2回目の騎乗。単勝1・7倍という想像を絶するプレッシャーの中で、ああしていれば、こうしていれば・・・という後悔のない、すばらしい騎乗だったと思います。ダービージョッキーは1年に1人ですが、ダービーの1番人気馬に乗る騎手も1年に1人だけです。この経験は絶対に無駄にはなりません。胸を張ってもらいたいと思います。

もちろん、勝った福永騎手はお見事でした。道中でペースが落ち着いたなか、シャフリヤールを馬群でしっかり我慢させました。直線入り口では前が壁になるシーンもありながら、開くと一瞬で抜け出し、最後はエフフォーリアの内から差し切りました。2頭の上がり3ハロンは33秒4で同じですが、ラスト2ハロン、1ハロンの決め手が違いました。毎日杯を驚異的なレコードで勝ったシャフリの良さが出ました。

思えば、福永騎手は1年前のコントレイルで無敗2冠に挑む重圧を経験し、克服しています。もっと昔には私が管理したキングヘイローで逃げて大敗したこともありますし、エピファネイアでは勝ったかと思ったところを、武豊騎手のキズナに差された経験もしています。ダービーを勝つことの難しさもうれしさも知るベテランと、これからを担う若武者による、見応えある追い比べでした。

牝馬サトノレイナスは5着。外枠で、外々を回りたくなかったのか、ルメール騎手がいつもより前に導きました。ペースを考えればいい位置取りでしたが、前へ行った分、いつもの脚は使えませんでした。ただ、牡馬を相手に立派な競馬でしたし、力は見せたと思います。(JRA元調教師)

日本ダービー、2着に敗れたエフフォーリアと横山武騎手
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