ルメールだからこそのG1・9勝/G1解説

<坂口正大元調教師のG1解説>

<ジャパンC>◇29日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走15頭

画面越しでしたが、結果に関係なく手をたたいていました。強いアーモンドアイが強い競馬で有終の美を飾る。勝負を挑んだ3歳馬コントレイルが2着、デアリングタクトが3着。“3強並び立たず”と言われますが、3頭で見事に決まりました。無敗3冠馬2頭が2、3着で、アーモンドの勝利の価値は上がりました。一方で、コントレイル、デアリングに土がついたことは残念ですが、避けることなく挑戦した姿に心から拍手です。半世紀以上、競馬に携わってきましたが、初めて味わう感動でした。

アーモンドは鞍上がルメール騎手だからこそ、9つもG1を勝てたと思います。今回も完璧でした。スタートを五分より少し速いくらいで出て、好位につけました。当面のライバル2頭より前で、来るなら来いと言わんばかりの競馬。直線は早めに芝のいい、最も伸びる進路を確保し、前につけたアドバンテージを生かしました。馬場が荒れてくると“ビクトリーロード”は限られます。コースを熟知し、今回も最大限に能力を引き出しました。

アーモンドはいつも、普通か、普通以上の状態でレースに出てきました。多くのサラブレッドは調子に波があり、スランプに入るとなかなか立て直せないものです。間隔を空けて使っていたとはいえ、その仕上がりにはいつも感心していました。国枝厩舎と牧場サイドが連携し、弱点を見極め、約3年もの間、いい状態と高い能力をキープさせてきたのでしょう。並大抵のことではありません。15戦して連敗は1度もなし。引退レースでは最強の刺客2頭の挑戦を退けました。なかなかこうはいきませんが、理想的な引退戦でした。

コントレイルは位置取りの差もありましたが、古馬との初対戦で能力は示しました。負けてほしくなかった、というのが正直なところですが、相手がアーモンドなら仕方ありません。デアリングタクトも同じくですが、最後にカレンブーケドールを鼻差とらえたひと伸びに、底力を見ました。2頭にとっては、アーモンドアイと対戦したこと、そして初めて敗れたことが、今後の大きな財産になるでしょう。すばらしい競馬でした。(JRA元調教師)

アーモンドアイを検量室前で迎えた国枝師(左)に、抱きついて喜ぶルメール騎手
アーモンドアイを検量室前で迎えた国枝師(左)に、抱きついて喜ぶルメール騎手