落ち着いて乗った松山の根性据わった騎乗/オークス

<オークス>◇24日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳牝◇出走18頭

栗東で会った時もそうですし、優勝インタビューを聞いていても、松山騎手は本当に優しい、穏やかな青年です。ですが、その騎乗は非常に根性が据わっていました。よくぞ落ち着いて乗った。そう思います。

デアリングタクトは単勝1・6倍という圧倒的な1番人気でした。1~2コーナーでは内枠を利して、距離ロスの少ないラチ沿いに導きましたが、位置取りは思ったより1、2列後ろだったかもしれません。まして東京芝は時計が速く、前が残る傾向にありました。

早く動きたいと思うのが普通ですが、松山騎手は4コーナー手前で少し外へ出した程度で、直線までほぼ動いていません。末脚を信じて・・・と言うのは簡単ですが、実際にオークスの大舞台で人気馬で、となると慌てるものです。直線ではいったん外へ向かい、詰まると判断すると、すぐ内へ切り替えましたが、ロスはその1回だけ。うろうろとせず、瞬時に馬群が開くところを見つけて抜け出しました。

無敗での牝馬2冠は史上2頭目です。牡馬の無敗2冠(皐月賞&ダービー)が過去6頭いるのに対して、少ないのはこの時期の牝馬の難しさでしょう。春から初夏にかけて牝馬にはフケ(発情期)があります。走る気が起こらず、100%の能力を出せないこともあります。ですから、陣営の調整、ケアにも拍手です。

生産者の長谷川牧場は、日高地区のいわゆる家族経営的な牧場です。昨年のダービーを勝ったロジャーバローズ(飛野牧場生産)もそうですが、大手生産の良血馬を相手に、こういう馬が勝つ。これも競馬の面白さです。とはいえ、デアリングの父エピファネイアはノーザンファームの生産。母系は社台ファームです。日本の馬産地が全体的に底上げされている証明でもあると私は感じました。

2着ウインマリリンは外枠からスッと前につけて、離れた2番手でいいペースを刻みました。普通なら残れるところを差されたのは相手が悪かったですが、横山典騎手のさすがの騎乗でした。(JRA元調教師)

デアリングタクトでオークスを制した松山騎手はガッツポーズ(2020年5月24日撮影)
デアリングタクトでオークスを制した松山騎手はガッツポーズ(2020年5月24日撮影)