ルメール速い流れで計算ずくの勝利/フェブラリーS

1年前とはまるで違うレースになりました。前後半800メートルずつのラップは46秒4-48秒8。前半の方が2秒4も速い、ハイペースでした。昨年は48秒0-47秒6という理想的なペースで逃げ切ったインティでしたが、今年はスタートもあまり良くなく、好位で速い流れに巻き込まれ、14着に敗れました。自分の型にはまらないともろい面が出た印象です。

一方、勝ったモズアスコットは心配されたスタートを五分に決めました。道中はちょうど中団に待機。ルメール騎手は流れが速いと分かっていたのでしょう。この日、フェブラリーSまでに5勝。東京の馬場、流れ、そして騎乗馬アスコットの脚、すべてを熟知したうえで、直線は満を持して追い出しました。鞍上の余裕を感じる騎乗でしたし、計算ずくの勝利でした。

芝とダート、両方でのG1勝利は史上5頭目です。私もかつて、管理馬のキングヘイローを初ダートでフェブラリーS(13着)に使ったことがあります。その時は苦手な内枠に入ったこともあり、適性がなかったのか分かりませんが、その見極めは非常に難しいものです。アスコットは18年安田記念を勝ったあと、芝で結果が出ない時期もありました。それにしても、前走の根岸Sでダートに使ったのは、矢作師の勇気ある決断だったと思います。母が米ダート重賞馬という血統面の裏付けもありましたが、結果で応えたアスコットもすばらしい馬です。

2着のケイティブレイブはもともと力のある馬ですが、何よりG1初騎乗の長岡騎手が冷静に流れを読み、力を引き出しました。昨年は、JRA・G1初騎乗だった藤田菜七子騎手がコパノキッキング(5着)で大きな経験を積みましたが、長岡騎手の今後にも大いに期待します。(JRA元調教師)

ルメール騎手(左)とガッチリ握手する矢作師(撮影・酒井清司)
ルメール騎手(左)とガッチリ握手する矢作師(撮影・酒井清司)