未来につながる「1キロ増」今年から基礎負担重量引き上げ 縮まる欧州との差、騎手の門戸拡大も

馬券作戦への影響は軽い? 今年から基礎負担重量が引き上げられ、年始から計6日間の開催を終えた。

ハンデ戦は計9鞍でトップハンデ(タイ含む)が4勝と意外に(?)好走。特に先週の日経新春杯では注目のヴェルトライゼンデが押し切った。59キロでの平地芝重賞Vは11年ぶり。その事実を池江師へ伝えると「11年前の59キロとは意味合いが違う。みんな1キロ上がっているから」と見解を示した。

実際に乗る騎手の間でも「小さい馬はしんどくなると思う」という意見もあった一方で「あまり変化は感じない」「体重管理も以前と一緒」といった声が多かった。年明け半月で結論を出すには早いが、現時点で大きな影響は見られない。

ただ、将来的にはプラスの効果を見込める。池江師は「慣れていかないと。欧州のG1ではもっと背負うからね」とも指摘した。かつて手がけたオルフェーヴルは、凱旋門賞で牡馬の古馬として59・5キロを背負った。さらなる例としては、欧州へ長期遠征したディアドラが、19年に勝った英G1ナッソーSで牝馬ながら60キロを克服した(翌20年は60・5キロで7着)。このギャップは縮まる。

騎手の未来にもつながるはずだ。「外国人は追える」というイメージは定着して久しい。もちろん、短期免許で来日するような海外の名手は技術において超一流だが、複数の有力騎手から「体格の違いもある」と聞いたことがある。

実際に、昨年に短期免許を取得した外国人7人(女性のドイル騎手除く)の平均体重53・3キロに対し、日本人上位10人(ルメール騎手除く)の平均は49・6キロだった(プロフィルを参照)。その差は3・7キロで、ボクシングならバンタム級(53・5キロ以下)とフライ級(50・8キロ以下)の2階級差。やはり“ワンパンチ”が違うはずだ。

日本ではトップ騎手でも重量52キロでの騎乗が珍しくない。乗れなければチャンスを失う。減量特典のある若手なら、さらに軽い体重を維持する必要がある。1キロの余裕ができたのは大きい。JRAは「騎手の健康と福祉および将来にわたる騎手の優秀な人材確保の観点」と説明。日本人の体格が大型化した中で、騎手の門戸を広げる意義もある。

長期的に見れば、数々のメリットが考えられる。一方で、競走馬への負荷が増すのは否定できず、故障が増えないか精査する必要はあるだろう。大事なレース予想への影響も含め、これから見極めていきたい。【太田尚樹】

◆基礎負担重量の引き上げ 今年から平地競走では基本的に1キロ増となった(3歳馬の馬齢重量は来年から)。平地の最低負担重量は49→50キロ(オープンは48→49キロ)に。3、4歳以上の別定戦の基礎重量も57→58キロとなった。そのため先週15日の小倉11R門司S(オープン、別定)では、2頭が60キロを背負って出走した(結果は5、9着)。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)

59キロで日経新春杯を制したヴェルトライゼンデ(右)
59キロで日経新春杯を制したヴェルトライゼンデ(右)