熱かった日本最大のセリ、コロナ禍にもびくともせず

今年のセレクトセールはクローズされたセリになる。そんなイメージを持っていた。いわゆる「3密」を避けるために、セリ参加者も同伴者は1名、マスコミも各社1名(カメラマンなし)と人数制限がなされた。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、会場入場時には手指の消毒、サーモグラフィーによる体温検査も徹底されていた。現地に行かずとも、電話での入札を解禁したのも今回が初の試み。厳戒態勢が敷かれた。

毎年、上場番号1番の馬はリザーブ価格(セリ始めの値段)が設定されず、参加者の一声でスタートする。昨年は4000万円の掛け声で始まり、今年は「3000万!」の声が出た。ノーザンファームの吉田勝己代表は「毎年、セリの1番目にはいい馬を持ってくる」と話す。いわば、セリの流れや勢いを決めるのが1番手の馬。ポロンナルワの19(牡、父ハーツクライ)。その馬がいきなり1億2500万円(税抜き)の値をつけた。口火を切ったミリオンダラーホースが、コロナ禍を吹き飛ばす売り上げの予兆だった。

会場内外の座席は適度に間隔が取られ、窓という窓は全て開放されている。なのに、熱い。気温じゃない。セリ参加者の熱だ。同代表は「やっぱりいい馬がそろっていますから。どの馬も本当にいい馬ですよ。高い馬がセリを盛り上げて、ほかの馬のセリにも活気が出ている」と相乗効果について言及した。

昨年は2日間の合計取引額が200億円を超えたセリ。大枚をはたいて子馬を購入するのだから、購買希望者が最後は現地で自分の目で確かめたい心理もわかる。ふたを開けてみれば、人も落札額も大盛況だった。1頭あたりの平均落札価格こそ昨年の4834万円には及ばなかったが、初日の売り上げは昨年に続く2度目の100億円超え。日本最大のセリはコロナ禍にびくともしなかった。【松田直樹】

ディープインパクト産駒のシーヴの19(牡、父ディープインパクト)
ディープインパクト産駒のシーヴの19(牡、父ディープインパクト)