強い馬、レベルの高い争いが競馬を盛り上げる

「G1番記者」を外した自分が言うのもアレだが、今年の有馬記念はいいレースだった。馬券がたくさん売れた。売り上げは昨年より約32億円増の468億8971万4600円。最近では1着ハーツクライ→2着ディープインパクトで決着した05年の499億927万6600円に次ぐ数字だった。

ネットを駆使すれば全国津々浦々で馬券が買える時代。自分は売り上げとファンの興味は直結すると考えている。22日は鉛色の雲が千葉県船橋市を覆っていたため、中山の入場人員は9万374人と90年以降、2回目の10万人割れ。来場者数は天気に左右されることはあるが、ファンがレースを見たいと思うかは“中身”による。今年はメンバーが実に濃かった。それが売り上げ上昇の理由だろう。

高品質な商品には当然、ファンは食いつく。一部重複するが、今年はG1馬11頭、今回限りで引退を迎える馬は6頭いた。加えて海外帰りの馬も3頭。密着取材中、多くの陣営は「勝てば年度代表馬も」と燃えていた。アーモンドアイを送り出した国枝師は「JRAはより魅力のあるコンテンツ、我々はより注目される馬をつくらないといけない」と話した。注目される馬とは、強い馬。平場でも、重賞でも、ハイレベルな争いが競馬を盛り上げる。

最高級の◎アーモンドアイは1番人気9着。でも、終わってみればいい有馬記念だったなと思う。大衆に周知される馬が1頭でも増えれば競馬人口の裾野も広がるが、今年はレースの内容がファンの心を動かした好例ではないか。有終Vの▲リスグラシューの競馬ぶり、仕上げはお見事。引退してしまうのはもったいないが、今週末のホープフルS、来年のクラシック戦線から名馬誕生を期待したい。競馬は、興奮と感動を連れて毎週やってくる。

有馬記念 過去10年の入場人員と売得金
有馬記念 過去10年の入場人員と売得金