元JRA騎手高嶋活士 パラ馬術で東京出場目指す

馬場馬術で2020年東京パラリンピック出場を目指す元JRA騎手、高嶋活士(26=コカ・コーラボトラーズジャパン)がラストスパートに入る。落馬事故に遭い15年9月に騎手を引退し、パラ馬術に転向して約4年。馬との信頼関係をさらに深め、課題をクリアしながら得点アップを図り日本代表入りを射止める。【取材=久野朗】

落馬で右半身まひ、右腕の力が入らないハンディを背負う高嶋は、技術とともに人馬一体に磨きをかけ続けている。10月17、18日に静岡・御殿場市で行われた日本代表選考対象試合、第65回東京馬術大会CPEDI★★★Gotemba2019で障がいの程度が2番目に軽いグレード4に出場。3年前からコンビを組むケネディ(せん11)との演技は初日61・125%(馬術の得点はパーセンテージ表示)、2日目は59・431%。ともに2位だった。

初日64・000%、2日目66・259%でいずれも優勝した昨年の同大会と比べれば物足りない。「ビデオを見ると馬の頭が動いていた。動きは良かったですけど」と反省し「今、出るか出られないかのレベル」と、夢舞台の日本代表入りに危機感も抱いた。右腕に力が入らないため「一番の問題は僕の手が揺れる」と、課題をしっかりと見つめている。

騎手時代、競馬や調教を終えた多くの騎乗馬は、厩務員や助手に任せればよかった。馬術は違う。ケネディの騎乗前に鞍を乗せ、前肢後肢にプロテクターを着けるなど自分で準備する。騎乗後は必ず馬体のケア、蹄(ひづめ)の手入れなどを行う。騎乗前後とも氷砂糖を与えないと、パートナーは機嫌を損ねる。「競馬より1頭へのかかわりが強い。馬との絆を感じられますよね」。

高嶋が出場した10月の大会でデモンストレーション演技を行った18年世界選手権グレード4銀メダリスト、ロドルフォ・リスカーラ(ブラジル)は「世界一の馬を連れて来ても、世界一になるとは限らない。人馬一体になって、どこまでやれるのかが問われる」と言った。競馬とは少し異なる人馬の信頼関係。そこに高嶋が感じる馬術の面白さ、大きな魅力がある。

パラリンピック出場資格を得る62%以上の得点を出している日本選手は現在5人、6人馬(1人が2頭でマーク)。高嶋もその1人で強化指定選手だ。日本代表選考対象試合は、来年3月までに1~2戦を予定。同年4月以降、開催国枠で最多4人が代表に選ばれる。68%以上で入賞(8位以内)レベルと言われるが「それぐらいの得点はほしいですし、いかないといけないですよね」。競馬に例えれば、4コーナーを回って最後の直線。馬との絆を深めながら、レベルアップの冬を迎える。

◆高嶋活士(たかしま・かつじ)1992年(平4)12月2日、千葉県市原市生まれ。JRA競馬学校騎手課程27期生として11年に美浦・柴崎勇厩舎所属でデビュー。JRA通算244戦0勝(うち障害39戦)。13年2月の障害戦で落馬事故に遭い、15年9月に騎手免許を返上。直後に馬場馬術でパラリンピックを目指す。17年に日本オリンピック委員会(JOC)の就職支援プログラムを活用してコカ・コーラボトラーズジャパンに入社。17年全日本パラ馬術優勝、18年世界選手権個人11位、団体10位。

◆パラ馬術 肢体不自由、視覚障がいを持つ人のために「馬場馬術」のルールを一部変更して行う。96年アトランタ大会から正式種目。障がいの程度に応じて最も重いグレード1から最も軽い同5の5段階に分かれる。高嶋の4は常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)による演技。審判が運動項目ごとに10点満点で採点し、その合計得点(パーセンテージ表示)で順位を決める。

ケネディに騎乗して演技する高嶋
ケネディに騎乗して演技する高嶋