凱旋門賞はチームジャパンで欧州芝に適した馬作りを

日本競馬50年の悲願達成には何が必要なのか? 今年の凱旋門賞に挑んだ日本馬3頭は7、11、12着と総崩れ。69年の初挑戦から半世紀の節目でも結果を出せなかった。連載「競馬ラプソディー」では、現地で取材した太田尚樹と松田直樹が勝つための方策を考察した。

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日本馬3頭の大敗に、武豊騎手が顔を曇らせた。「日本のホースマンとしてはちょっとショック」。自身が乗った重賞未勝利のフランス馬(6着)にさえ先着できなかった。では、勝つために何が足りないのか? 僕が気になっていたのが、追い切り後に聞いた角居師の言葉だ。海外4カ国でG1を制したトレーナーは「これまで日本馬が挑戦してきた積み重ねが生きるか」との問いに、興味深い指摘をしていた。

「それぞれの厩舎でやっているので、積み重なっているとは思わない」

半世紀にわたる挑戦の歴史で、実はノウハウが蓄積されていない。もちろん個人レベルや牧場を通じての情報交換はあるだろう。ただ、国内に戻れば各厩舎間はライバル。手の内をすべてさらけ出すのは難しい。

国として勝ちにいくなら、真の「チームジャパン」を結成すべきだろう。情報共有だけでない。かつてJRAから海外遠征馬へ出された褒賞金や補助金(G1馬なら最大1000万円)は14年に廃止。くしくも同年以降は凱旋門賞で好走馬が出ていない。騎手や調教師からは「海外馬券の売上があるんだから」と復活を望む声も多い。

そして最後は運が必要だ。レース後に1人で帰るムーア騎手を呼び止めた。「凱旋門賞を勝つためのポイントは?」。過去2勝の名手はリンゴをかじりながら「馬場が大事だ」とシンプルに答えた。ロンシャンの馬場は特殊で、天候が勝敗を大きく左右する。だから、人事を尽くして天命を待つ。それがすべてだろう。【太田尚樹】

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下位に敗れたブラストワンピース、フィエールマンの2頭は今年、初の試みを行っていた。英国ニューマーケットでの調整。結果は出なかったが、新たな挑戦を否定するつもりはない。調教施設がより日本に近い環境を選んだ調整は、検証こそ必要でも、否定すべき要素は現時点ではないと考える。

どうしても勝てない凱旋門賞。

問題はもっと根本的なところにあるのではないか。レース後、手塚師、大竹師の2人は全く同じことを口にした。

「馬場を言い訳にしたくない」

この言葉がやけに耳に残っている。欧州の芝は日本とは質が違う。馬場が渋れば、欧州の芝は桁違いにタフになる。レースでは条件はどの馬も同じ。欧州馬が日本の高速馬場で大レースを勝てないのと同様に、日本馬が欧州の芝に苦しむ傾向が近年、顕著に出ているように感じる。今年は当日昼まで雨が降り、馬場状態は上から7番目のTRES SOUPLE。確かに相手も強かったが、それ以上に日本と欧州、それぞれのコースに適した馬づくりの差が出た印象を受けた。

今年の出走はなかったが、アーモンドアイのような“S”ランクの主人公的な馬が欧州に打って出ることはもちろん歓迎する。ただ、適性の差を埋めるのは一朝一夕ではできない。凱旋門賞を日本競馬の悲願とするならば、ある程度の能力を保持している馬を前提に、常日頃から欧州馬場を意識した馬づくり、調教を重ねていく必要があるのではないか。【松田直樹】

凱旋門で最下位に終わったフィエールマン。左は2着のエネイブル(撮影・太田尚樹)
凱旋門で最下位に終わったフィエールマン。左は2着のエネイブル(撮影・太田尚樹)