23年最優秀障害馬マイネルグロンのプロ意識 阪神SJ圧勝ゴール後に急停止した理由とは

障害界の新絶対王者へ突き進む人馬の“プロ意識”を見た-。昨年の最優秀障害馬マイネルグロン(牡6、青木)は、先週土曜の阪神スプリングJを圧勝したゴール後になぜか急停止した。今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」では、その場面を目撃した太田尚樹記者が理由に迫った。主戦の石神深一騎手(41)とともに目指すのは、ポスト・オジュウチョウサンの座だ。

9日、阪神スプリングJを制し笑顔をみせる石神深騎手(右)、この日引退式のあった北沢騎手(左)がプレゼンターを務めた(撮影・白石智彦)
9日、阪神スプリングJを制し笑顔をみせる石神深騎手(右)、この日引退式のあった北沢騎手(左)がプレゼンターを務めた(撮影・白石智彦)

どうした!? 阪神スプリングJで5連勝を果たしたマイネルグロンと石神深騎手に驚かされたのは、そのゴール直後だった。他馬が1~2コーナーまで流して止まるのとは対照的に、入線して急減速すると数十メートルで常歩(なみあし)へ。浅はかながら、故障したのかと思ったほどだった。

それはアクシデントではなく、意図のある動きだった。レース後の鞍上に理由を聞く機会があった。

「なるべく負担のないよう、すぐ止めるようにしています。変なところで、けがをさせたくないので。細心の注意を払っています」

見ている側は熱くなって見逃しがちだが、乗っている側はレースを終えても止めるまで気を抜けない。障害飛越込みの3900メートルを走った後ならなおさらだ。次元の違う話で恐縮だが、僕はフルマラソンのゴール後に結婚指輪へキスするポーズを決めようとしたところ、体勢を崩して転び、肋骨(ろっこつ)と手の骨を折った痛恨の記憶がある。全力を出し尽くした直後には危険が潜んでいる。

ただ早く止めればいいわけではない。無理にブレーキをかければ逆に危ない。あの場面では、マイネルグロン自身にも止まろうとする意志を感じた。石神深騎手は「ゴール板も分かっているし、それも分かっているので」と教えてくれた。自分の仕事を理解している-。驚異の“プロ意識”だ。自由気ままだったゴールドシップの産駒というのも興味深い。かつてオジュウチョウサンを駆った名手が「スターホースになれると思っているので」と見込む逸材。今後も目が離せない。そのゴール後まで。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)

9日、阪神スプリングJ、最終障害を飛越するマイネルグロンと石神深騎手(撮影・白石智彦)
9日、阪神スプリングJ、最終障害を飛越するマイネルグロンと石神深騎手(撮影・白石智彦)