中山グランドJで「虹の橋渡った」シングンマイケル

中山グランドJ(J・G1、芝4250メートル)でシングンマイケルが命を落とした4月18日、最終競走まで降っていた雨がうそのようにやみ、中山競馬場の北東に大きな虹が現れた。ペットなど愛する生き物が亡くなると「虹の橋を渡る」というのだそう。2月17日に64歳で亡くなった高市圭二元調教師の後を追ったのだろうか。よく頑張ったな-。そう笑顔で迎えられただろうか。

最初の月命日が過ぎて、伊坂重憲オーナー(69=神奈川県遊技場協同組合理事長)に思い出を聞いた。「かわいい顔をした馬でした。騎手の思い通りに跳べるんです。低い障害は低く、高い障害は高く。だから跳び終わっても、傷ひとつつかない」。飛越名人でスタミナ自慢。暮れの中山大障害を勝った時も、歩きではなくキャンターで引き揚げて来る余力があったという。

水しぶきが上がる不良馬場の当日、馬は絶好調だったそうだ。「3コーナー手前までは、金子騎手も大江原調教師も私もみんな勝ったと思った。道悪もうまいので、のめったり滑ったりすることがなかった」。

ところが急にスピードが落ちた。心房細動が疑われた。「あの馬が疲れるわけがない。解剖していないので本当のところはわかりませんが、心臓だと思います。心臓に異常が起きたとみて差し支えありません」。

ふらつきながらたどり着いた最終10号障害。それでも跳んだ。意地か本能か。しかし支えるべき前脚に力はなかった。地面に頭から突っ込んでしまう。頸椎(けいつい)関節脱臼。「最後の力を振り絞って跳んだ。その時はもう死んでいた。空中で亡くなったのです。私はそう思っています」。壮烈な戦死に、騎手はその場で立ちすくんだ。

「敗因は馬場でも距離でもない。騎手は止めるか迷ったそうですが、馬に跳ぶ意思があった。騎手は責められません。最後まで頑張った結果が、ああなったのです」

打倒オジュウチョウサンに挑んだ2019年最優秀障害馬。生まれ故郷のヒカル牧場(北海道新冠町)には、記念碑が建つ予定。6歳の春は、まだ若すぎた。

中山グランドJに出走したシングンマイケル
中山グランドJに出走したシングンマイケル