武豊歴史的3勝も「悔しい思い出の方が」/有馬記念

平成の競馬史を振り返る連載「Legacy ~語り継ぐ平成の競馬~」は今回が最終回。有馬スペシャル4回連載の最後として「有馬記念と武豊」を取り上げる。過去の3勝は90年オグリキャップ、06年ディープインパクト、17年キタサンブラックといずれも平成の競馬史に名を残す名馬ばかりで、すべてラストラン。平成のスターホースの背には武豊がいた。【取材・構成=平本果那】

有馬記念歴代トップタイの3勝。グランプリ制覇の味を最も知るはずの武豊騎手だが、真っ先に思い浮かぶことは悔しい思い出だと振り返る。

「いろいろあったね。いいことも苦いことも・・・。うーん、俺、あまり有馬記念でいい思いをしていないなぁ。悔しい思い出の方が多いよ」

3勝の陰に隠れるのは、2着8回という無念の結果。89年スーパークリーク、91年メジロマックイーン、96、97年マーベラスサンデー、99年スペシャルウィーク、03年リンカーン、05年ディープインパクト、16年キタサンブラック・・・。いずれもあともう少しのところで勝利を逃した。落胆したまま中山競馬場を去った記憶が頭をよぎる。

「悔しいことの方が圧倒的に多かった。これだけの有力馬に乗せてもらっているのに、3勝しかしていない」

ただ、その3勝はいずれも平成の競馬史に深く刻み込まれている。劇的で素晴らしいレースだった。90年、21歳の時にあのオグリキャップの手綱を任された。

「あの有馬記念は僕の中でも大きい。思い出深い。この時期になると毎年、あのレースを振り返らされるよ(笑い)」

天皇賞・秋、ジャパンCと大敗し、マスコミの評価は低かったが、最後のレースで怪物がよみがえった。「まさか勝つとは思わなかったなぁ」。スタンドからの手拍子とオグリコールには思わず鳥肌が立った。

それから16年後。競馬ブームを巻き起こしたディープインパクトのラストランは、レース後の引退式とともに印象深い。

「あの時は自信があった。負けられないし、負けたくないレース。本当に自信があったから、緊張しなかった。最後だと思って、味わって乗っていた」

ディープの1完歩、1完歩を心にしっかり刻みながら、中山の直線をさっそうと駆け抜けた。

そして昨年、オーナーが歌手の北島三郎として話題になったキタサンブラックの有終も決めた。

「ラストランだと分かっていることだったから、自分が勝ちたいというより、花道を飾らせてあげたいという気持ちが強かった。特に前年は負けていたので、勝たせてやりたかった」

逃げて、後続を突き放す強い勝ちっぷり。歴代最多タイとなるG1・7勝目を相棒に贈り、ブラックは歴代賞金王にも輝いた。

いずれも、日本の競馬史に平成以降も語り継がれるであろう名馬のレースで、ラストラン。平成の有馬記念、平成の競馬史は、武豊とともにあったと言っても過言ではないだろう。

17年、キタサンブラックで有馬記念を制した武豊騎手
17年、キタサンブラックで有馬記念を制した武豊騎手
武豊騎手の有馬記念成績
武豊騎手の有馬記念成績
90年、オグリキャップで有馬記念を制した武豊騎手
90年、オグリキャップで有馬記念を制した武豊騎手
06年、ラストランの有馬記念で有終Vを決めたディープインパクトと武豊騎手
06年、ラストランの有馬記念で有終Vを決めたディープインパクトと武豊騎手
17年、有馬記念を制したキタサンブラックと武豊騎手
17年、有馬記念を制したキタサンブラックと武豊騎手