人生で一番必死にもがいてつかみ取ったもの/坂井コラム第24弾

皆さま、ご機嫌いかがですか?

この時期になると、あることが話題になります。「調教師および騎手免許試験」についてです。また、今回もG1の話ではありません(笑い)。

受験される方はこの時期に向けてとんでもない量の勉強をしていはります。

騎手さんの試験は、どんな感じなのか聞いたことがないのですが、知り合いの調教師さんに「どんな勉強をするんですか?」と尋ねてみたところ、競馬法規などは丸々頭に入っている状態にしたり、獣医学、馬学の知識、競馬施行についてなどなど(まだまだたくさん勉強する事があるそうです)。聞いているだけで目が回ってしまいました(いろいろ教えてもらいましたが、途中で頭痛がして右から左に話が流れていきました)。

もちろん、私も競馬学校で習っているのだから(言うてはることは)わかりますが、試験問題を見て書けるかと言われると無理です。そもそも、覚えていないから書けないですが(笑い)。

この調教師さんは、調教助手さんをされていたころからの知り合い(お友達)で、私と同じ年です。30代半ばで調教師さんになられる方も多く、中には競馬学校で同期やった方も調教師さんになられたりしています。

この調教師さんに「たまにご飯に行ったり、仕事でいろいろな所に出張したりで飛び回ってて、勉強してる姿を見せたことなかったけど(めちゃくちゃ失礼なこと言ってますね。許してもらいましたが)いつ勉強してたんですか?」と尋ねると「空いた時間に365日、1日も欠かさずしていたよ」と言わはるので、驚きました。

こうして自分の目標をかなえることは、並大抵の努力ではないやろうし、まして同世代でかなえたというのはほんまに尊敬します。

そして、先生は「多分、生きてきた中で大学受験と匹敵するくらい勉強した期間やったと思う」と言って笑っていました。

私は心の中で、「なんだよ、カッコイイじゃないか。このやろー」と悔しく思いながら(笑い)、私が生きてきた中で一番勉強した時っていつやろうかいな、と考えていました。

そもそも、作文書くのは好きでしたが、基本的には勉強嫌いで、していませんでした。なので、競馬学校厩務員課程を受験するときだったのではないかと思います。


高校を受験する時、もちろん勉強しましたが、その時はまだ勉強「だけ」に集中すればよかったのですが、競馬学校厩務員課程の試験の時は牧場で勤務しながらだったので、時間を見つけるのに必死でした。

今の厩務員さんの試験は私が受験した時よりも、教科も増えて、実技も厳しくなっていると聞くので、これから受験を考えている方には参考にならないかもしれないと思いますが、私の時の1次試験、学科は「馬学・国語(作文)・社会(時事問題)」だったように思います。(10年以上前なので記憶は定かではないですが)。

厩務員さんの試験は半年に1度行われていました。私は牧場で勤務しだして、2年たった頃から受験を始めました。今思うと、この頃の私は試験を甘く見ていたと思います。

自分の年齢が随分若かったこと(20歳になる前でした)。試験問題は高校受験の問題が解ければ出来ると思っていたこと。だからサラッと勉強していれば、そのうち受かるだろうと考えていたのです(今考えると、ほんま恥ずかしいですが)。

案の定、1度目の試験は1次試験も通過出来ませんでした。私が本気で勉強するきっかけになったのは半年後の2度目の試験の時でした。

この時、牧場からは私ともう1人が一緒に試験を受けることになりました。彼が牧場に来たのは、私よりも1年遅かったのですが、大学で乗馬をされていて、卒業してから牧場で勤務をされたので年齢は3~4歳上だったように思います。

甘ちゃんだった私はこの時も「今くらい勉強していたら、そのうち受かるやろう」的精神で受験しました。するとどうでしょう。結果、私は不合格。彼は見事に1次試験を通過して、そのまま2次試験も合格。競馬学校への切符をつかみ取ったのでした。

「元々、彼はとても頭が良かった」と言ってしまえば話はそこまでですが、同じように働いていたのだから言い訳にはなりませんでした(後々、聞いた話では満点に近い点を取ってはったそうです)。

私は「今は大学卒業してから厩務員さんを目指す人が多いのに、今の勉強の仕方では到底合格するレベルまでもいけないのか。人の10倍勉強せんと無理やん」と、やっと気が付いたのでした。

そこからは、生活が一変しました。仕事をしてから、筋トレをし、毎日新聞を読んだり、ニュース番組を見てノートにまとめ、高校受験以来、参考書を開いて勉強しました。お馬さんが調子を崩した時は、馬房の横にわらを置いて様子を見ながら勉強したこともありました。そして、週1度、仕事が終わってから乗馬を習いに行きました。この時ほど、「次こそは必ず受かってみせる」と思ったことはなかったです。そのおかげで、3回目の試験は1次試験合格、2次試験はガチガチで面接官の先生に「坂井さん、もう少しリラックスしていいよ」と心配されながらも何とか合格することができました。

私にとっては、生きてきた中で一番必死にもがいてつかみ取ったものだったと思います。そして「努力は必ず返ってくる」と実感した時でした。

さて、今回はジャパンC。お馬さんたちも厩舎関係者も毎日、必死に努力してレースにのぞみます。私はその姿を、精いっぱい応援しようと思います。

それでは今回はこの辺りで。皆さま、ごきげんよう。

栗東トレセンで馬と一緒にお勉強? する坂井さん
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