熱くなってしまう「スーパー未勝利」/坂井コラム第22弾

皆様、いかがお過ごしでしょうか。だんだんと涼しい気候になってきて、過ごしやすく快適な季節になってまいりました。

皆さんも秋のGⅠ連戦で盛り上がっていはるのではないでしょうか。毎週末、熱い競馬が繰り広げられていますが、この時期、特に力の入るレースがあります。私だけかもわかりませんが(笑い)。

「3歳未勝利戦」(このコラムが出るときには、もう終わっていますね・・・笑い)

夏の開催が終わり、秋競馬開幕の阪神、中山競馬場で行われる3歳未勝利馬にとって最後のチャンス(何年か前、北海道開催が10月まであった時は、北海道でも行われていましたが)で、別名「スーパー未勝利」と言われています。皆さんもご存じだとは思いますが、このレースには条件を満たしていないと出走することができません。その条件というのは・・・

①中央競馬の競走、地方競馬指定交流競走および外国の競馬の競走への通算出走回数が5回以下である馬。

②直前に出走した競走が中央競馬平地競走であり、その競走における着順が第5着以内の馬

―3歳未出走馬および未勝利馬のうち、上記の条件のいずれかに該当する馬。ただし出走資格を限定した未勝利への出走は1回限りとします(間違ったことを書いてはいけないので、ちゃんと調べて抜粋いたしました)。

簡単に言うてしまうと、出走5回以下か、前走で5着以内で次走出走優先権利を持っているか・・・と私は思っています。調べてみるともっと詳しく条件がありましたね(笑い)。出走5回以下という中には、もちろんこの「スーパー未勝利」が初めての競馬だというお馬さんだっています。

私もそういうお馬さんを担当したことがありますが、「このワンチャンス、何とかよい結果を残したい」と力が入ったものです(私が力んだところで、走るのはお馬さんなんですがね)。

「なんでそんなギリギリまでレースに使わなかったん?」と思う方もいはるかもしれません。

でも、わざと使わないなんてことはありません。血統が良くても、能力があっても、そのお馬さん自身の身体が弱かったり、競馬に向かうまでの過程で何らかのアクシデントがあったりしてデビュー戦までたどり着くのに時間が必要だったりするからなんです。

また、5着以内にきて権利を持っているお馬さんでもそうです。未勝利脱出までの道がそこまで見えているからなおさら、何とかなってほしいと思います。

私は(前にもコラムに書きましたが)「2着の坂井」と呼ばれていたほど2着が多く、何度も悔しい思いをしてきました。調べてみると未勝利戦で4回連続2着というのがありました。なかなかのもんでした。もちろん、未勝利戦以外にもありますが(笑い)。

他のレースであれば「悔しいけど、お馬さんが無事なら次がある」と思って気持ちを切り替えることもできますが、このスーパー未勝利だけは勝たなければ、その子とのコンビはそこで終わってしまうのです。だからより一層「何とかなってくれ」という思いは強くなります。

よく、この時期のスーパー未勝利馬を担当しているお友達と話すとやはりみんな「この子とまだ競馬一緒に行きたいからほんま何とか頑張ってほしいわ」なんて会話になりますし、やはりこういう風に思っているのは私だけではないのだなと感じます。

もちろん、担当厩務員さんの「思い」だけで勝てるわけではありません。レースのその時に一番良い状態であるのはもちろんですが、やはり勝負事なので運をものにしたお馬さんが勝つのだと私は思います。これは、何も未勝利戦だけでなく、GⅠレースでも同じことが言えると思います。

担当厩務員さんは体調管理をしたり、調教を工夫したり、自分の出来る限りのことをして競馬に送り出します(これもどのレースに向かうときも同じですが)。

これは私の考えですが、厩務員さんはお馬さんが好きでこの仕事についている人ばかりです。だから、自分が少しでも携わったお馬さんに愛情があります。

それは未勝利馬であれ、上のクラスで走っている馬であれ同じなんです。もちろん上のクラスに行けば、そのお馬さんと過ごす時間が長くなるので絆も情も深くなっていくと思います。だから、未勝利馬には、1つでも勝って欲しいと願うのです。

私にとって、自分の担当馬はどんな子も自分の娘ちゃん、息子ちゃんでありました。だから今でも未勝利戦をみるとその時を思い出して「何とかみんな頑張れ」と力が入ってしまいます。

未勝利戦を勝てなかったお馬さんたちは、乗馬として新しい「馬生」を歩む子や、繫殖牝馬として生まれた牧場に帰れる子もいれば、戦いの場を地方競馬に移してレースに挑み、勝って中央競馬に戻ってくる子もいます。そうして戻ってきたお馬さんの中にはその後GⅠで戦ってる子も見てきました。

ですが、全てのお馬さんがそうであるかと言うと、悲しいですが、そうではありません。

だからなおさら、この「スーパー未勝利」の戦いには熱くなってしまうのだと思います。ほんまは、お馬さんに携わるものとして、もっと冷静でいないとあかんかったのかもしれませんが、私には無理でした(笑い)。

さて、今回は天皇賞・秋です。皆さんはもちろんGⅠを見て盛り上がらはることやと思いますし、きっとお馬さんたちも熱いレースを見せてくれることでしょう。しかしGⅠだけでなく、未勝利戦にもそんな熱い想いがあるんだと知ってもらえるとうれしいです。

さて、今回はこの辺りで。皆様、ごきげんよう。

栗東トレセンで馬を愛でる坂井さん
栗東トレセンで馬を愛でる坂井さん