レガシーワールド幸せな余生/坂井コラム第35弾

皆様いかがお過ごしでしょうか。「ジャパンカップ」と言うと皆さんはどのお馬さんを思い浮かべるでしょうか? 私は前にもコラムに書きましたが、お世話になっていた、へいはた牧場生産の「レガシーワールド」が浮かんできます。

若い競馬ファンの方の中にはご存じない方もいはるかもわかりません。1993年ジャパンカップ勝ち馬であり、騸馬で初めてG1を勝ったお馬さんでもあります。もう26年も前のことなんですね。

当時小学生だった私は、まだ競馬と出会っていなくて、レガシーワールドの勝利をリアルタイムでは見ていなかったし、ワールドのことを知りませんでした。なので、ワールドの引退レースである宝塚記念は見ていたはずなのにワールドではなく勝ち馬のマヤノトップガンに心を奪われていました(めっちゃワールドに失礼やわ)。

私がワールドを知ったのは引退してから4年後、2000年のことです。高校卒業を間近に控え、(あ、年バレバレ)女の子ということと、競馬学校を目指しているということもあり、なかなか預かっていただける牧場が見つからなかった私に救いの手を差し伸べてくれはったのが、へいはた牧場の社長でした。

「きびしい修業になるけれど、覚悟があるならうちにいらっしゃい」との言葉通り、ほんまにきびしかった(笑い)。何度諦めて帰ろうかと思いましたが、厩務員さんになりたかったこと、それと逃げ帰るには駅まで歩いて半日以上かかるので、そんな根性あったら働けるやんと思い、帰るのをやめました(笑い)。

そんな私が初めて出会ったG1馬が、引退してへいはた牧場に帰ってきていたレガシーワールドです。コラムを読んでくれていはる方の中には、へいはた牧場を訪ねたことのある人もいはるでしょう。その時に幸せそうな余生を送っているレガシーワールドを見た方もいはるのではないでしょうか。今もワールドは、へいはた牧場で相棒のポニー、ハニーちゃんと暮らしています。

そんなレガシーワールドですが、今年の4月23日で30歳になったそうです。毎年、へいはた牧場の社長と奥さん、そしてレガシーワールドとハニーちゃんに会いに行くのが恒例なのですが、今年はいろいろ事情があって皆に会いに行くことがかないませんでした。そんな私のために写真付きメールを送ってくれはったのです。

写真で見るレガシーワールドは元気そうに見えました。そして、メールには「ワールドは今年30歳になりました。元気にしています。しかし、年齢もあるのか、歯が弱くなってきて、昔のようにバリバリにんじんをかじれなくなりました。最近は小さく切ってあげています」と書かれていました。

メールを読みながらふと、私が初めてへいはた牧場でレガシーワールドと出会った時のことを思い出していました。当時、彼はすでに引退していましたが、瞳はギラギラとしていて生命力がみなぎっている感じがしました。今思うと、そりゃ彼も私も10代だったんやから、お互いギラギラしていたのも納得なのですが(笑い)。当時は「これがG1馬なのか。迫力すごいな」と少しビビッていました(笑い)。

サンシャインパドックに放牧に出すためにひき馬する時も、油断すると走られそうな雰囲気とひき手から伝わってくるパワー。「本物はちゃうな」と緊張しながらひいていました。

その半面、相方のポニー、ハニーちゃんが自分のそばから離れて見えなくなると、さみしがっていななきながら狂ったように探し回るのです。

「なんや、このギャップは。めっちゃかわいいやないか」とギャップ萌え(笑い)した私は、現役時代のレガシーワールドを知りたくなりました。

そこから、私はレガシーワールドのレースを初めて見たのです。元々、少し気性が激しかったレガシーワールドは去勢をしてから実力を発揮していくのですが、全てのレースを見終わったときには彼のファンになっていました。ワールドは気性の激しさゆえに勝ち上がるまでに時間を要し、騸馬ゆえにクラシックには出走出来ず、2度の骨折で休養を余儀なくされながらジャパンカップを勝ちました。

これは、私の勝手なイメージなのですが、ワールドは新馬戦からとんとん拍子でG1まで順調に勝ち上がったエリートのようなスタイリッシュな感じではなく、骨太で、たたき上げで身につけた強さを持っていて、めちゃくちゃカッコイイなと思いました。

そんなワールドが30歳。写真のワールドは初めて会った時のようなギラギラ感はなく、穏やかで優しい目をしていました。それはきっと社長と奥さん、牧場のスタッフさん、相方のハニーちゃん、そしてファンの方があたたかく見守っていてくれはるからでしょう。

最近、競走馬や種牡馬を引退し、牧場で余生を過ごしているお馬さんたちのたてがみが切り取られるという事件をニュースで目にしました。しかも、そのたてがみがネットで売られていると聞き、ほんまに驚きましたし、怒りにも似た悲しみを感じました。

「競馬」という、きびしい世界で戦ってきたお馬さんたちには心穏やかに余生を過ごしてほしいと心から願っています。もう2度とこのような事件が起こりませんように・・・。

さて、レガシーワールド様、来年は必ず会いに行くから元気で長生きしてね。

今回のコラムはレガシーワールドへのラブレターになってしまいました(笑い)。そんな恋心を胸にジャパンカップの応援しようと思います。

今回はこの辺りで。それでは皆様ごきげんよう。

14年11月、へいはた牧場の馬房で過ごすポニーのハニー(左)とレガシーワールドにカイバを食べさせる幣旗力さん
14年11月、へいはた牧場の馬房で過ごすポニーのハニー(左)とレガシーワールドにカイバを食べさせる幣旗力さん
93年のジャパンカップを制したレガシーワールド
93年のジャパンカップを制したレガシーワールド
「元気かな?」へいはた牧場のレガシーワールドに思いをはせています
「元気かな?」へいはた牧場のレガシーワールドに思いをはせています