ジャパンC唯一の外国産馬はぼっち調教歓迎?
いよいよジャパンカップですね。水曜日の本紙「World Horse Racing」にも書かせていただきましたが、無敗の3冠馬と世界が認める歴史的名牝が一堂に会するレースは空前絶後でしょう。個人的には「猪木VSアリ戦」をほうふつとさせる血湧き肉躍るアドレナリンの上がるスポーツイベントとなりそうです。
競馬で思い出すのは(だいぶ古い話になりますが)、1977年の札幌でもちあがった幻の一戦です。
当時4歳だったトウショウボーイが足慣らしでダート1200メートルの札幌短距離Sというオープン戦を使うという情報が流れ、ここに当時のルールによってダービーに出られず「残念ダービー」という別名で呼ばれた日本短波賞を圧勝して札幌入りした外国産馬マルゼンスキー(当時3歳)が挑戦状をたたきつけて、前年の府中3歳S(現在の東京スポーツ杯2歳S)でマルゼンスキーと鼻差の勝負をしたヒシスピードも参戦と話が膨らんでいって大いに胸を躍らせたものです。
結局、トウショウボーイは回避して5頭立てとなりましたが、マルゼンスキーが2着ヒシスピードに10馬身差をつけた圧勝劇は今も忘れません。もし、トウショウボーイとマルゼンスキーの対戦が実現していれば・・・と懐かしく思い出します。
前置きが長くなりました。ジャパンCに唯一参戦する外国馬ウェイトゥパリスについて触れておきましょう。
ウェイトゥパリスは英国で生産されてフランスで調教された芦毛の7歳牡馬です。1歳時に英国タタソールズ・イヤリングセールに上場されて5万ギニー(約680万円)でイタリア人オーナーのパオロ・フェラーリオ氏が落札。イタリアのアントニオ・マルチアリス厩舎から2歳時(2015年)の秋にデビュー。地元ミラノを中心に競走生活を送ったのち4歳秋にアントニオの息子でイタリアからフランスのシャンティイ調教場に本拠を移したアンドレア・マルチアリス調教師(34歳)のもとに転厩しました。
余談になりますが、今年の凱旋門賞当日に行われたG1マルセルブサック賞をタイガータナカで制し、女性騎手で最初のフランスG1優勝を飾ったジェシカ・マルチアリス(30歳)はアンドレアの妹です。今回、調教師は来日せず、ジャパンCでは、この馬と17回コンビを組んだクリスチャン・デムーロの兄のミルコが鞍上に起用されることになりました。
ウェイトゥパリスの血統は父が08年のカナダ年度代表馬でG1ハリウッドターフカップSなど北米で3つの芝重賞を制して、10年より英国のジャドモンドファームで種牡馬となったシャンゼリゼ(父デインヒル、母ハシリは産駒に5頭のG1ウイナーを送る名牝)。母はG2リディアテシオ賞など5勝を挙げて96年のイタリア中距離チャンピオン(1900~2200メートル部門首位)となったグレイウェイ。ウェイトゥパリスの半兄にはG3伊セントレジャーで3着したシーマドプリュイ(07年生、父シングスピール)、G1共和国大統領賞など2つのG1勝ちを含む17勝を挙げたディスタントウェイ(01年生、父ディスタントビュー)がいます。
ウェイトゥパリスの芦毛はグレイソヴリン系の名種牡馬で日本でもアドマイヤコジーン(安田記念)、ローブデコルテ(オークス)の父としても知られるコジーンから受け継いだものです。
父のシャンゼリゼ、母グレイウェイから連想されて「パリへの道」と名付けられたウェイトゥパリスはこれまで36戦7勝、2着10回。イタリアとフランス以外の出走歴はなく、欧州を出るのはこれが初めて。収得賞金は日本円に換算して約8050万円。馬名に込められた凱旋門賞出走は一昨年と今年にかなえています。
競走馬として頭角を現したのは6歳になった昨年夏。7月のG2モーリスドニョイユ賞(パリロンシャン、芝2800メートル)で前年のG1メルボルンCで2着したマルメロを鼻差下して重賞初制覇。9月のフォワ賞では、のちの凱旋門賞馬ヴァルトガイストに2馬身差の2着と悪くない競馬をしました。
7歳になった今年は3月のG3エクスビュリ賞(サンクルー、芝2000メートル)からキャンペーンを開始。ここは不良馬場で6着でした。ブドー騎手で臨んだ5月のG2アルクール賞(パリロンシャン、芝2000メートル)は2着。続くG2シャンティイ大賞(ドーヴィル、芝2500メートル)を4馬身半差で完勝します。この勝利で勢いづいたウェイトゥパリスは4度目のG1挑戦となるガネー賞(シャンティイ、芝2100メートル)に臨み、ソットサスの2着。中2週で向かったG1サンクルー大賞(サンクルー、芝2400メートル)では後方待機から直線で3頭が並ぶ激戦を制し、デビューから34戦目で待望のG1タイトルを手にしました。
9月13日のG2フォワ賞(パリロンシャン、芝2400メートル)はスタート直後にナガノゴールドにぶつけられる不利があって、勝ったアンソニーヴァンダイクから約3馬身差の5着。凱旋門賞では直線最内に進路を取りましたが、重馬場に伸びきれず同じく後方からの競馬となったディアドラに次ぐ9着に終わりました。勝ったのはガネー賞で頭差を争ったソットサスでした。
英国のタイムフォーム誌がつけるタイムフォームレーティングは123で、これは凱旋門賞馬のソットサス(127)と4ポイント差。芝2400メートルのベストタイムは昨年9月のG2フォワ賞でのちの凱旋門賞馬ヴァルトガイストの2着した時に計時した2分27秒8(良馬場)です。
ウェイトゥパリスはとても繊細で気むずかしいところがあって集団調教を好まないため追い切りもほとんどが単走で行われています。東京競馬場のぼっち調教は歓迎なのでしょう。(ターフライター奥野庸介)
※競走成績等は2020年11月27日現在
- 1年前はこんな風景でしたね。日曜、東京競馬場に行きたいなぁ
- 目立つ看板。行くのちょっと怖いかなぁ(笑い)