【朝日杯FS】アルナシーム“暴走”で見せた重賞級の脚力/水島コラム

今年の朝日杯FSは抽選なしで1勝馬も出走できることになった。水島晴之の「前哨戦その一瞬」は、東京スポーツ杯2歳Sで6着に善戦したアルナシーム(牡、橋口)に注目。レース中盤から掛かって暴走しながらイクイノックスの1秒1差に粘った内容を評価。重賞級の脚力を検証する。

東スポ杯2歳Sで6着のアルナシーム
東スポ杯2歳Sで6着のアルナシーム
 
 

東スポ杯2歳S11秒台ラップ連発

東スポ杯2歳Sのアルナシームは1馬身出遅れた。向正面入り口では先頭から12、13馬身。時計にして2秒近い差がある。このまま折り合えば良かったが、鞍上の制止を振り切り3角手前(残り1200メートル地点)では一気に先頭へ並びかけた。手綱を取った武豊騎手が「ノーコントロール」と話したように、制御が利かなかった。レースの形としては最悪だったが、この“暴走”の中に能力の一端が見えた。

アルナシームが掛かってポジションを上げはじめた3ハロン目からの推定ラップは11秒3-11秒5-11秒7-11秒6-11秒0-11秒9-12秒5。失速したゴール前の1ハロン以外はすべて11秒台を刻んだ。つまり400メートルから1400メートルまでの1000メートルは57秒1で飛ばしたことになる。これでは止まってもやむを得ない。

逃げて途中から絡まれたナバロンが最下位12着、2番手のデリカテスが11着に沈んだのをみても、いかに前が速かったか分かる。その中で勝ったイクイノックスと1秒1差、4着ダンテスヴューと0秒1差は評価していい。もう少し我慢できていたら、勝ったとは言わないが2着争いには食い込めていただろう。鞍上が「いいものは持っている」と感じた走りは、数字にも表れていた。

今回も課題は折り合いに尽きる。レースの雰囲気にのまれず競馬ができるかどうか。不安もあるが4カ月半ぶり、東京までの長距離輸送、20キロ増だった前走と違い、今回はプラス材料が多い。1度使ってガス抜きできていれば、力みも少なくてすむ。前を壁にできる内枠が条件だが、狙ってみる価値のある1勝馬だ。

セリフォス展開位置取り左右されない

<デイリー杯2歳S>

後方2番手で折り合ったセリフォスが、直線外から豪快に差し切った。スローペースで全体の時計(1600メートル1分35秒1)は遅いが、上がり3ハロンは33秒4をマーク。圧倒的な1番人気に応えた。新馬は2番手から押し切り、新潟2歳Sでは内を突き、今回は外からと展開、位置取りに左右されないのが強み。初めての右回りで少し4角で膨れたのは気になるが、2度目の阪神なら問題はない。

4着のプルパレイは4角先頭から逃げ込みを図ったが、最後は決め手の差が出た。1頭になるとソラを使う面があって乗り方は難しいが、最後まで集中力をキープできれば粘り強い。むしろ多頭数はプラスに出る。

ジオグリフ先行力あり瞬発力も兼備

<札幌2歳S>

ジオグリフは出遅れて後方からの競馬になったが、徐々にポジションを上げて前を射程圏に捉えると、直線は余力十分に後続を突き放した。このメンバーでは力が一枚も二枚も上。そんな印象を与えた。本来は先行力があり瞬発力も備えている。休み明け、初の関西遠征など条件は厳しくなるが、馬っぷりには大物感があり、底を見せていない魅力もある。7着エーティーマクフィは好位追走も踏ん張り切れなかった。ひと息入れてどこまで良くなっているか。

ドーブネ多頭数が鍵

<ききょうS=1着>

好スタートを決めると、マイペースに持ち込んで逃げ切った。走りに幼さはあるが素質は感じる。新馬は後方から大外を回って差し切り、前走が逃げ切りともまれた経験がないので多頭数が鍵になりそう。

ダノンスコーピオン混戦不安

<萩S=1着>

スローペースでも折り合いはついた。2着キラーアビリティをマークして進み、ゴール前できっちり差し切った。能力は感じるが混戦をさばいた経験がなく、ごちゃついた時にどんな反応を示すか不安もある。

カジュフェイス逃げ込めれば

<もみじS=1着>

前半は少し力んでいたが、何とか我慢できた。直線で2着以下を突き放す強い競馬。ゴール前は手綱を押さえる余裕もあった。早めの平均ペースで後続の体力を奪い、そのまま逃げ込む形が多い。それほど切れるタイプではないので、よーい、ドンの形になると厳しい。

ドウデュースまだ幼い

<アイビーS=1着>

好スタートをいったん控えて4番手。操縦性の良さを見せた。追ってしっかり伸びたが、抜け出してフワッとする面を見せるなどまだ幼い。もう少し前向きさが出てくるといいが能力の高さは感じる。