「切れないディープ」ディアスティマ長距離の新星/天皇賞・春

天皇賞・春はコントレイルもクロノジェネシスも不在。G1馬が2頭という混戦ムードだ。水島晴之の「前哨戦その一瞬」は、松籟Sを逃げ切ったディアスティマ(牡4、高野)に注目した。いわゆる「切れないディープ」で、後続のスタミナを奪う持久力が持ち味。驚異のラップタイムに、マラソン界のニュースター誕生の予感がする。

 
 

ライバルのスタミナ奪う持久力ディアスティマ

松籟Sは3200メートルとは思えないハイペースでレースが始まった。スタートから飛び出したシンボは、2ハロン目から11秒1-11秒1のラップを刻むが、それを外からかわしていったのがディアスティマだ。馬なりで先頭に立つと前半1000メートルは59秒4。短距離並みのスピードで主導権を奪った。

1周目スタンド前も極端には落とさず、1600メートル通過は1分36秒6。この間11秒台のラップを3回も記録した。フィエールマンが勝った昨年(京都)が同1分39秒1で、11秒台はわずか1回。違うコースで馬場差もある。単純な比較はできないが、いかに高速馬場の阪神とはいえ、先行馬には厳しい流れ。それを押し切った内容は3勝クラスのものではない。

1、2コーナー中間でいったん13秒台(13秒5、13秒0)に落とし、残り1200メートルから11秒9-11秒9-11秒9にペースアップ。緩急の出し入れが自在にできるところがステイヤーの資質だ。後続を早めに動かすことで、ライバルのスタミナを徐々に削りとっていく。4コーナーから直線にかけての400→200メートルで再び11秒5に加速して2着を3馬身突き放した。

ディープインパクト産駒は「切れる」印象だが、ディアスティマは持久力に優れたタイプだ。昨秋に復帰した4戦の上がりは、1勝クラス36秒1、本栖湖特別34秒2、グッドラックH36秒6、松籟S36秒1。瞬発力勝負になった本栖湖特別(2着)以外、すべて36秒台の上がりで押し切っている。

つまり消耗戦に持ち込んで粘り切るのが、この馬の勝ちパターン。ブリンカー着用とともに「徹底先行」という自分の形ができたのは大きい。今回は一気に相手が強くなるが、前走でコースは経験済み。豊富なスタミナを生かし、強気の逃げで後続を封じるシーンがあっても驚かない。

ディープボンド突き放し圧勝!本格化の証し

<阪神大賞典>

ディープボンドの圧勝だった。4番手から直線は後続を突き放す強い競馬。3000メートル級の長距離戦に適性があり、道悪もうまい。条件がそろったのも大きいが、馬体重が10キロ増えていたように、本格化したとみていい。

2着ユーキャンスマイルは有馬記念後にひと息入れて、ようやく本来の活気が戻ってきた。ただ、どちらかといえば左回り巧者。外→内回りという条件も割り引きか。3着ナムラドノヴァンは不得手の道悪を克服したように、力をつけている。豊富なスタミナを生かせばG1でも侮れない。

4着シロニイは道悪でうまく流れ込んだ。高速決着では厳しい。6着メイショウテンゲンは最後まで集中して走っていた。正攻法の競馬をしたことが刺激になれば前進があっていい。7着アリストテレスはポジションを取りにいって掛かったのが敗因。道悪もこたえて体力を消耗した。菊花賞2着だが、それほどスタミナのある方ではなく、3200メートルはぎりぎり。良馬場が絶対条件になる。

ウインマリリン56キロと距離がポイント

<日経賞>

ウインマリリンは内をロスなく回って抜け出した。53キロの軽量だったこともあるが、折り合いよく先行すれば、そう簡単には止まらないことを証明した。今回は3キロ増の56キロと3200メートルが鍵になる。2着カレンブーケドールは最速タイの上がり34秒5で詰め寄ったが、あと1歩届かなかった。掛かるタイプではなく、3200メートルはこなせる。3着ワールドプレミアは、大外からの末脚が目立った。まだ仕上がり途上の印象があり上積みも見込める。5着ジャコマルはスローの逃げで入着。あれ以上はどうか。6着オセアグレイトは距離延長がプラスに出る。

オーソリティ能力G1級も折り合い鍵

<ダイヤモンドS>

オーソリティは内から抜け出したところをグロンディオーズに差された。道中は何とかなだめていたが、折り合いピタリという感じでもなかった。今回もそのあたりが鍵になるが、能力はG1でも通用する。道中どれだけ我慢できるか。しまいまで体力を温存できれば、上位争いに絡んでも不思議ではない。