“脚長おじさん”シヴァージの末脚/高松宮記念

高松宮記念は新興勢力の台頭が怖い。本来のスプリンターに加え、マイルのG1馬、ダートからの転戦組などバラエティーに富むメンバーとなった。水島晴之記者の「G1前哨戦その一瞬」は、芝3戦目の北九州短距離Sを制したシヴァージ(牡5、野中)に注目する。小回りの小倉で強烈なマクリを決めた“脚長おじさん”の末脚を検証。高配当の援助はあるか。

シヴァージの強烈まくり
シヴァージの強烈まくり
芝3戦目の北九州短距離Sを制したシヴァージ
芝3戦目の北九州短距離Sを制したシヴァージ

芝に替わって脚質転換シヴァージ

北九州短距離Sは逃げたジョーカナチャンが、前半3ハロン33秒7で飛ばした。重馬場にしては速い流れ。先頭から最後方まではざっと15馬身。この縦長展開を後方2番手から豪快に差し切ったのがシヴァージだ。ダートでは先行して結果を出してきたが、芝に替わって「差し馬」への脚質転換に成功した。

藤岡佑騎手が仕掛けたのは残り400メートル地点。馬群の外へ出して徐々に先行馬との差を詰める。だが、この時点でも先頭とは10馬身差。しかも各馬が馬場の悪い内を避けて外へ広がったため、必要以上に大外へ振られた。直線は馬場の7分どころ。常識的には届かない位置だが、ここからの末脚がすごかった。

数字で検証する。シヴァージの上がり3ハロンは最速の34秒9。これはレースの上がり36秒3を1秒4も上回る。特にラスト200メートルの伸びが素晴らしい。イラストで示したように先頭に立ったイエローマリンバとは約6馬身の差があった。これを推定11秒6で差し切った計算になる。前が止まったとはいえ、200メートルで1秒差を逆転するのは容易ではない。

さらに特筆すべきは長く脚を使った点だ。残り600メートルからの推定ラップは11秒6-11秒7-11秒6。あれだけ大外を回って、すべて11秒台でまとめた脚力は重賞、いやG1でも通用する。「前の馬とは差があったが、反応が良かったので届くと思っていた」(藤岡佑騎手)。見た目のヒヤリ感とは裏腹に、3/4馬身の着差以上に余裕があったということだ。

2走前の淀短距離S(4着)でも3角で前をカットされ、直線も壁になる不利がありながら、上がりは最速の34秒2だった。2戦連続であの脚が使えれば本物だ。あとは高速決着に対応できるかどうか。1分7秒台では厳しいが、週末は雨予報も出ている。少し渋れば長く脚を使って差し込むシーンが目に浮かぶ。

ダノンスマッシュスタートが鍵

<オーシャンS>

ダノンスマッシュは出遅れたが、すぐにポジションを挽回できたのが大きい。直線は力の違いを見せつけた。安定した走りでG1を勝つ力はあるが、やはりスタートが鍵になる。2着ナックビーナスは2番手から絶妙のタイミングで抜け出した。あの競馬で差されては仕方がない。G1では少し壁があるか。3着タワーオブロンドンは内枠があだになった。太め(6キロ増)の分、ダッシュも仕掛けてからの反応もひと息。58キロの影響もあった。ひとたたきで大幅良化が見込める。

グランアレグリア高い能力示す

<阪神C>

グランアレグリアが、中団から鮮やかに差し切った。前半は少し掛かり気味だったが、馬の後ろで折り合うと、直線は開いたスペースに誘導してあげるだけ。軽く仕掛けて2着フィアーノロマーノに5馬身差。短距離でのポテンシャルの高さを示した。あの内容なら1ハロン短縮しても問題ない。むしろ脚がたまる分、プラスに働きそうだ。7着シヴァージは初芝で外め先行という正攻法で挑んだ。勝ち馬には離されたが、2着とはコンマ5秒差。その後の走りを見ても重賞級の力はある。

アウィルアウェイしまいいい脚

<シルクロードS>

アウィルアウェイが、大外から直線一気に差し切った。中途半端に出していくより、しまいに懸けた方がいい脚をを使う。4着モズスーパーフレアは自分のペースで逃げたが、荒れた馬場が影響して粘り切れず。調子は上向いてきたが、今回は左回り克服が鍵になる。5着セイウンコウセイは復調気配を感じた。他馬との比較で58キロは厳しかったし、右回りもひと息。得意の左回りなら踏ん張りも違う。

ダイアトニック千二で生きる

<阪急杯>

2位入線のダイアトニック(進路妨害で3着に降着)は、1400メートルでもスッと好位4番手を取り、追っての反応も速かった。さらに200メートル短くなるが、前走で先行させた経験が1200メートルで生きる。5着ステルヴィオはゲートに課題を残した。直線ごちゃついて進路を切り替えるロスもあったが、やはりスタートが鍵になる。互角に出れば上位争いしても不思議はないが。