<ダービー>◇29日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳◇出走18頭

<担当記者のちょっといい話>

自分のためだけの勝利じゃない。みんなのためだ。

かつて武豊騎手にとって、数々の金字塔は単なる通過点だった。その意識が大きく変わったのは4年前。18年9月のJRA通算4000勝の時だったという。

あの光景が忘れられない。ファンが幾重にも取り囲むウイナーズサークルに、数十人の後輩騎手が記念の黒い帽子とTシャツに身を包んで目の前に集まった。「立ち会えてうれしいです」とはしゃぐ若手もいた。

後日には松永幹や蛯名(ともに現調教師)ら同世代の騎手仲間が祝宴を開いてくれた。同じテーブルを囲んだ横山典騎手には「俺も3000勝したくなった」と声をかけられたという。

「思った以上にみんなに祝福してもらって・・・。先々何勝したいなんて、それまで考えたことがなかったけど、あの時、初めて『5000勝したい』と思った」

自分が勝てば、たくさんの人々が喜んでくれる。あらためて実感した。だからこそ、36年目の今も「モチベーションが切れたことはない」と断言できる。5000勝、60歳現役、そして凱旋門賞制覇。見果てぬ夢へ向かい、53歳のヒーローはまだまだ走り続ける。【中央競馬担当=太田尚樹】

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