<世界へ挑む 侍ホースマン(5)>

海外G1・7勝。昨年は世界最高峰の1つ、ブリーダーズCで1日2勝の快挙を成し遂げ、“世界のYAHAGI”の名をとどろかせた矢作芳人調教師(61)。だが、意外にも凱旋門賞は初挑戦となる。

「まさかステイフーリッシュが初めてになるとは、夢にも思わなかった。凱旋門賞は特別な存在であることは間違いない。ようやく初挑戦できるのでここから毎年、行きたいなと。毎年行かないと勝てないと思っていますからね」。“まさか”と師も口にする意外性が、愛馬フーリッシュ最大の魅力だ。

出走20頭で最年長の7歳馬。勝機はいかに。師には考えがある。

「ヨーロッパの関係者も言うし、俺もそう思うんだけど、凱旋門賞の日のあの馬場は非常にミステリアス。単に道悪がうまけりゃいいとか、そういう馬場じゃない。そこにある意味、期待している。ああいう非常に重い道悪は決して得意とは思えないので、あまり強気なことは言えないけど、あの馬自身もミステリアスなのでね」

師が思うフーリッシュのミステリアスさとは。「それはやっぱり、海外に行って変わるところ。本当に違う」。要因は環境だ。栗東トレセンのように馬が周囲にたくさんいる環境では落ち着かないが、他馬から離れてマイペースで調整できる海外は合っているという。実際に、2月のサウジではほとんど本馬場に入れず、角馬場のようなところで1頭だけ離れて調整。それがうまくいった。

「そういう意味で、馬はいるけど土地があまりに広くて、人口密度的なものが薄いシャンティイの環境は間違いなく合っている」

日本では3歳時の重賞1勝にとどまっていたが、7歳になってサウジ、ドバイで重賞連勝。その活躍自体がまさに予測不可能だ。初挑戦の凱旋門賞で“世界のYAHAGI”が演出するミステリーを楽しみにしたい。(おわり)

【奥田隼人】

◆矢作芳人(やはぎ・よしと)1961年(昭36)3月20日、東京都生まれ。父は大井競馬の調教師だった和人氏。開成高卒業後にオーストラリアで競馬を学び、84年にJRA競馬学校厩務員課程入学。04年調教師免許取得、05年3月開業。14、16、20、21年にJRA賞最多勝利調教師。ダービー2勝などJRA、G1・14勝。海外G1・7勝。JRA通算7939戦769勝。重賞55勝(9月30日現在)。

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