<日本の夜明けぜよ(3)>

【シャンティイ(フランス)27日=奥田隼人】現地の日本人トレーナーが徹底分析! 今年の凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月2日=パリロンシャン)は、天気予報などから道悪での開催が現実味を帯びてきた。連載「日本の夜明けぜよ」第3回は、フランスで開業5年目の清水裕夫調教師(40)に今年のポイントを解説していただいた。今の特殊な馬場傾向や、道悪から浮上する日本馬&海外馬はどの馬か・・・。

凱旋門賞の最注目ポイントは、天気&馬場と言っても過言ではない。渡仏15年目の清水師に、貴重な現地情報を聞いた。

清水師 雨予報が続いているので、当日も良馬場になることはまず難しいと思います。ロンシャンは粘土質のため、重馬場になると結構しんどい。正直、日本馬はこっちの重い馬場は厳しいと思います。しかし、過去の日本馬の好走はすべて重か不良。なので一概に駄目とも言い切れないのは興味深い点です。そこにいちるの望みを託すのも、ありかもしれないです。

舞台となるパリロンシャンの馬場は、今年の開催で例年にない特殊な傾向が続いているという。

清水師 今年のロンシャンはパリ大賞典の1開催を除き、逃げ馬有利な馬場になっています。馬場状態が良や重い馬場になってもです。これは今年に入って出てきたトラックバイアス(偏り)ですね。自分が競馬に使っている中でそういう感覚です。凱旋門賞当日はどうなるか分からないですが、タイトルホルダーには追い風だと思います。この馬のスピードについていける馬はおそらくいないでしょうし、血統背景も悪くない。宝塚記念のような走りができれば面白いと思います。

外国馬では大手ブックメーカー各社で上位に推されているルクセンブルク(牡3、A・オブライエン)などは渋った馬場がプラスに働きそうだ。

清水師 ルクセンブルクは距離が初めてですが、父がキャメロット(英愛ダービー馬)。道悪も悪くないですね。何百頭もいるクールモア(世界最大級の競走馬産業組織)が送ってくるということは、手駒の中で一番勝ちに近いということでしょう。良だと気持ちスピードが足りない気もするので、多少渋った方がいいと思います。アルピニスタ(牝5、M・プレスコット)は2走前のサンクルー大賞で本当に硬い馬場をこなしてビックリしましたが、馬場は渋った方が間違いなくいいと思います。その他は実績豊富な昨年の覇者トルカータータッソ(牡5、M・ヴァイス)。穴っぽいところではソットサス(20年優勝)とかぶる面が多いアルハキーム(牡3、J・C・ルジェ)が気になりますね。

清水厩舎で調整を進める日本馬2頭についても「ステイフーリッシュは疲れが取れて良くなっています。ディープボンドも昨年と違う直行ローテはいいと思いますね」と仕上がりは順調。清水師自身も凱旋門賞当日のG1オペラ賞にフォールインラブ(牝3)を出走させる予定で“日本勢”の活躍に期待だ。

◆凱旋門賞の勝ち時計 ロンシャンの最速は11年にデインドリームがマークした2分24秒49。昨年のトルカータータッソは2分37秒62(馬場状態はJRA発表で重)。シャンティイ競馬場で実施された16年にはファウンドが2分23秒61で勝利している。

◆清水裕夫(しみず・ひろお)1981年(昭56)10月31日、千葉県柏市生まれ。開成中・高を卒業し、日本獣医生命科学大で馬術を学んだ。17年にフランスの調教師試験に合格し、18年にシャンティイ地区で開業(小林智師に次ぐ日本人2人目)。凱旋門賞馬モンジューのハモンド師から19年末に厩舎を引き継いだ。好きなサッカーチームは柏レイソル。趣味は料理。

《black bold《■主催者が馬場状態説明》

フランスギャロの競走担当役員とパリロンシャン競馬場の馬場課長が26日、馬場状態と天気予報に関して説明を行った。馬場は夏場に18ヘクタールの全体補修を行い、どこを通っても均一な状態。馬場保護のため、土曜開催は全周において内から仮柵を設置し、凱旋門賞当日の日曜は元の位置に戻される。加えて直線では、例年通り日曜のみオープンストレッチを使用。内から5メートル分にスペースが生まれる。

26日時点の発表で馬場状態の数値は3.4。10段階で6番目に重い「Good to Soft」(やや重)となっている。レース2日前の金曜にも50%の確率で2~5ミリの雨量が予想されており、馬場がさらに悪化する可能性もあるが、凱旋門賞当日は26日と同じ「Good to Soft」を目指すという。

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