ジャパンCを最後に現役最強牝馬アーモンドアイ(牝5、国枝)が引退する。連載「アーモンドアイを支えた男たち」では携わった関係者にスポットを当てる。
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「いいアドベンチャー(冒険)でした」。25日の共同会見で、クリストフ・ルメール騎手(41)は朗らかに言った。アーモンドアイの全14戦中、騎乗停止中だった18年シンザン記念以外の13戦で手綱を取った。JRAのトップ騎手。お手馬がレースでバッティングすることは何度もあった。「いつもアーモンドアイがファーストチョイスでした」。一緒に3年間を駆け抜けてきた。
最終戦は晴れやかな気持ちで迎えられる。心情はこれまでのG1とは大違いだ。前走天皇賞・秋のパドック。厩舎スタッフと周回する相棒を見つめ、口を突くはずの冗談が出てこない。せわしなく屈伸運動を繰り返すだけ。史上初の8冠がかかっている。こんな緊張、初めてだった。結果は史上2頭目となる連覇。「50年後もみんな覚えている。レジェンドホースになりました」。涙の勝利は重圧を飼いならした瞬間でもあった。
17年8月6日の新馬戦で2着に敗れた直後、国枝師に「次はイージーWIN」と告げて始まった長い旅路。鞍上がラブストーリーとまで言った歩みも今回で最後になる。「特別な馬。いい結果を出したいです。無事に終えるのが一番大事。ジャパンCが終わったら強い子どもをつくってくれると思う」。嫁入り前にもう1つ、大きなタイトルを取らせてあげるつもりだ。【松田直樹】