<秋華賞>◇18日=京都◇G1◇芝2000メートル◇3歳牝◇出走18頭

歴史的名牝の誕生だ。単勝1・4倍に支持されたデアリングタクト(杉山晴)が史上初めて無敗の牝馬3冠を達成した。松山弘平騎手(30)に導かれ、オークス以来の5戦目も次元の違う強さを見せた。やや重馬場をものともせず豪快に伸び、勝ちタイムは2分0秒6。18年アーモンドアイ以来、史上6頭目の牝馬3冠を土つかずで手にした。

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白と青の勝負服が、記念すべき日を祝福する秋晴れの空に輝いた。やったぞ、やった! そんな声も、淀の空に響いたようだった。デアリングタクトにまたがった松山騎手はゴール板を過ぎると、左手で作った牝馬3冠の“スリーピース”を何度も突き上げた。ガッツポーズを何度もしてしまうほど、むき出しの喜びに浸った。

史上初の無敗牝馬3冠を、単勝1・4倍の期待にこたえて達成した。「重圧もありましたが、馬を信じるだけだと思っていました。自分の馬が一番強いと信じて挑みました」。ピーンと張った糸のような緊張感が緩み、ようやく笑みがはじけた。

信じていたからこそ、焦らなかった。7枠(13)番からのスタートはひと息。前半1000メートルは59秒4とレースのペースは流れた。中団より少し後ろの位置取り。4コーナーは後方から追い上げてくる馬と横一線に並ぶ形になった。「手前を替えて、脚を取られるところがありました」。晴天で回復したものの、馬場はやや重。「ポテンシャルが高く立て直して伸びてくれました」と愛馬が克服してくれた。直線では次元の違う脚で伸び、後続を寄せ付けない。「強い力を発揮してくれました」と絶賛した。

松山騎手には「一番しんどかった時期」がある。デビュー2年目、2010年の年明け。馬にけられてケガをした。焦りを感じた。「これからという時だった」。騎手になって初めて涙を流す姿に師匠の池添兼師も「うちの家内が『男の子は泣くもんじゃないよ』と怒ったくらい」と鮮明に覚えている。

その年はレースでも落馬が続き、骨折もした。最多勝利新人騎手(36勝)に輝いた翌年は30勝どまり。それでも師匠の前で泣いたのは1度だけ。弱音は吐かず、池添兼師は「いい根性をしている。どんな馬でも一生懸命乗ってくる」と認めた。

デビュー12年目に大きなチャンスをものにした。G1に続く最終レースで自身初の年間100勝も達成し「すごい日。うれしい日です」。苦しい時間は、この日のためにあったのかもしれない。

馬も強くなっていた。秋華賞のパドックでは、イレ込んでいた。精神面は2冠を達成した春も課題だった。本馬場には最後に登場し、返し馬は他馬がいなくなった淀の直線で、鞍上と呼吸を合わせてゆっくりと行った。「落ち着きを取り戻してくれた」。ゲートの中でそわそわする局面も、ぐっとこらえた。

内なる闘いも制し、歴史的な快挙を達成した。杉山晴師は「上のステージでレースをしてみたい気持ちはあります」と言い、松山騎手は「できればこのまま負けたくないなと思います」と力強く話した。周囲を驚かせ、感動の渦に巻き込む無敗伝説はまだ終わらない。【辻敦子】

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