五輪3大会連続金レベルの偉業/ヴィクトリアM

<ヴィクトリアマイル>◇17日=東京◇G1◇芝1600メートル◇4歳上牝◇出走16頭

言葉で表現するのが難しいほど、アーモンドアイは強すぎました。4コーナーを回ってもまだ手応えは楽で、ルメール騎手はゴールまで手綱を持ったまま、馬なりで後続を置き去りにしました。勝ち時計1分30秒6は前年のレコードに0秒1差。鞍上は後ろを振り返る余裕がありましたし、最後まで追っていれば当然、更新していたでしょう。

3歳時に牝馬3冠を達成した後は、ジャパンC、ドバイターフ、天皇賞・秋と牡馬を相手にG1・3勝。あらためてすばらしい戦績です。牝馬限定戦は秋華賞以来でしたが、レベルが違いました。あまりの強さに、前走の有馬記念(9着)は何だったのか・・・となりますが、少なからず疑いの目もあったなかで、本当に強い姿を見せてくれました。これで国内外を合わせて芝G1・7勝目。最多タイです。不思議なことに、ルドルフもディープも、他の名馬たちも7勝で現役を終えています。年齢的なこともあり、1つの限界線なのでしょう。いろんな考え方がありますが、サラブレッドの1年は人間の4年程度といわれます。G1・7勝に2年から2年半かかると考えれば、人間でいうと8~10年間。オリンピックで3大会連続して金メダルを獲得するくらいの偉業です。アーモンドの今回の強さを見ると、その限界線を超える未知の8勝目へ、いよいよ秒読みです。この春、また秋にどのレースを選ぶのか、あと何回走るのか。歴史を塗り替える瞬間を、私も心待ちにしています。

世の中は少しずつ明るくなり始めましたが、皆さんまだまだ、家で過ごされる時間も多いことでしょう。ひょっとすると、競馬をあまり知らない方も今回のアーモンドアイをご覧になられたかもしれません。こんなに強い馬がいるんだと、ほんの少しでも心を動かされ、前を向く力を得た方がいれば、競馬関係者の1人としてうれしい限りです。(JRA元調教師)

ゴール前、力強く抜け出したアーモンドアイが、ヴィクトリアマイルを圧勝した
ゴール前、力強く抜け出したアーモンドアイが、ヴィクトリアマイルを圧勝した