矢作師の決断で愛弟子古川奈穂騎手が休養 左肩違和感、将来考え手術も視野

女性新人騎手の古川奈穂騎手(20=矢作)が先週から休養に入った。左肩の違和感のため病院で検査を受け、手術も視野に入る。復帰までには4~6カ月ほどかかる見込みで長期休養となりそうだが、その背景には師匠である矢作芳人調教師(60)の、愛弟子の将来を見据えた決断があった。今回の「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」では師弟の思いに迫る。

 ◇  ◇  ◇

「乗ろうと思えば乗れるんだけど、万全の状態じゃないと迷惑をかけることになる」。4月28日の栗東トレセンで、矢作師は弟子の古川奈騎手の休養について説明した。「いい雰囲気できていたのに残念です」。表情からは苦渋の決断だったことが伝わってきた。

4月24、25日の新潟での騎乗後、古川奈騎手の左肩に違和感が出た。競馬学校時代にも負傷し、留年した経緯もある。これまでのレースでも、左肩を気にして馬上でぐるぐると回すシーンもあった。ただ、それでも結果は出してきた。

5年ぶりのJRA女性騎手として3月にデビュー。同13日の阪神6Rバスラットレオンで初勝利を挙げ、同期単独トップの6勝をマークする(3日現在)。同騎手は検査を控え「ほぼほぼ手術になると思います。休養して完全に治して復帰します」と語った。覚悟が伝わってくる表情だった。

矢作師の決断は、これまでも数々の結果に結びついてきた。4月25日に香港でクイーンエリザベス2世Cを制したラヴズオンリーユーは、前走ドバイシーマC3着後に帰国せず、直行するローテで新しい道を開拓。昨年のモズアスコットはダート転向2戦目でフェブラリーSを制した。

師は先週の月、火曜に古川奈騎手と話し合った。結論はその火曜の夕方になったという。「いつかは治療に入らないといけない。プロとして完全な形でないと駄目なので」と師。先週に検査を終え、セカンドオピニオン、サードオピニオンを聞く意向だが「手術の可能性が高い」との見通しを示す。トップトレーナーの決断は馬に関してだけではない。愛する「人」にとっても、きっと英断になるはずだ。

古川奈騎手の初勝利の相棒バスラットレオンは、今週のNHKマイルCに藤岡佑騎手で出走する。いつか自分も-。古川奈騎手は応援しながら、きっと大舞台に思いをはせているだろう。復帰が待ち遠しい。【取材・構成=網孝広】(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)

師の配慮で長期休養に入る古川奈穂騎手
師の配慮で長期休養に入る古川奈穂騎手
矢作芳人調教師
矢作芳人調教師