育て未来のホースマン 人手不足に悩む競馬界の現状

馬に携わる仕事を目指す人が少ない。今週の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」は人手不足に悩む競馬界の現状を紹介する。

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今年はコロナ禍で中止になったが、美浦トレセンでは「キッズチャレンジ」という子供の厩舎見学イベントが年2回行われていた。東京競馬場内の競馬博物館では、その一角に競馬にかかわるさまざまな仕事を展示しているコーナーがある。博物館職員は「競馬のキッザニア(子供に各種の仕事を体験してもらう施設)を目指したい」という。馬が身近にいなくなった現在、馬に携わる職業の志望者が減少している。ある調教師は「このままでは大変なことになる」と危機感を募らせる。

美浦、栗東の両トレセンでは人手不足はそこまで感じない。しかし周辺の牧場などでは外国人労働者の手を借りないと、やっていけないほど深刻だという。牧場に仕事を紹介している競走馬育成協会の担当者は「どれだけの外国人労働者が牧場で働いているかは把握してませんが、我々が知っている牧場で外国人労働者がいない牧場はありません」と説明する。北海道・日高管内の軽種馬育成牧場で働くインド人がここ数年で激増。外国人労働者の手を借りないと牧場運営に支障を来すのが現状だ。

もちろん競馬に関係する個人、団体ともに心配しているだけではない。厩舎の仕事を見学する「キッズチャレンジ」のモデルとなったイベントを始めたのは斎藤誠師で、将来の人手不足を懸念していたから。「僕は競馬界とまったく縁のないところから調教師になった。競馬界に少しでも恩返しをしたいと思って始めた」と明かす。最初は厩舎単独で行っていたが、今では賛同して協力する厩舎も増えている。

2月末からの無観客競馬のため行われてないが、各競馬場で育成、生産牧場での仕事を紹介する「BOKUJOB」というイベントは昨年で10回を数えた。未来のホースマンを育てることに、今のホースマンたちは懸命に取り組んでいる。【三上広隆】

有志の厩舎とJRAが企画した、昨年夏の子どもたちの厩舎見学
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