武豊騎手さらなる野望「ブラックの子にも乗りたい」

JRA最多タイの芝G1・7勝を挙げたキタサンブラックが、先週9日に史上34頭目の顕彰馬に選定された。かつての相棒の新たな勲章を喜んだ武豊騎手(51)にとっては、メジロマックイーン、ディープインパクトに続く、主戦を務めた3頭目の顕彰馬になる。今回の「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」では、「もっと増やしていきたいね」とさらに意欲満々のレジェンドに迫る。【取材・構成=網孝広】

キタサンブラックが顕彰馬に選定された。かつての愛馬の勲章に、武豊騎手はうれしそうに笑った。思い出は尽きない-。そんな表情で振り返った。

「たくさん一緒に勝つことができた。牡馬でG1を7つ取るのは大変なこと。今の時代では珍しい、国内の古馬王道路線をすべて走って、本当に競馬を盛り上げたと思う」

主戦を務めた馬が顕彰馬となるのは3頭目。メジロマックイーン、ディープインパクト、そして今回のブラック。他にも、オグリキャップでは2戦2勝(90年安田記念、有馬記念)、ナリタブライアンには4度乗り、ウオッカでは10戦でG1・3勝を挙げた(08年天皇賞・秋、09年ヴィクトリアM、安田記念)。コンビを組んだ顕彰馬は計6頭。30年以上、第一人者として走り続けるレジェンドのすごさを表すひとつだろう。

「名馬にたくさん乗せてもらってきたという、自負はある。僕の財産です」

それぞれの馬に思い入れはある。名馬の背中を多く知ることが騎手・武豊を成長させてきた。「ブラックとの2年間は僕自身、すごく充実していた。この馬のたくましさに感動した。いろいろ勉強させてもらって、ジョッキーとして成長させてもらった」。調教、レース以外の時間も、常にブラックのことを考えていた2年間だったと振り返る。

実はブラックには、初めて騎乗する前から“乗りたい”という願望を抱いていた。「いい馬だなと。乗りたいなと思っていたら、声がかかった」。16年初戦の大阪杯から引退レースの17年有馬記念まで約2年間、12戦でコンビを組み、6度もG1制覇を成し遂げた。

かつての相棒が顕彰馬になるのは、騎手にとっても名誉なこと。「もっと増やしていきたいね。まだまだいくよ。ブラックの子にも早く乗りたいね」。51歳のレジェンドは、そう言ってまた笑った。

17年の有馬記念を制したキタサンブラックと武豊騎手
17年の有馬記念を制したキタサンブラックと武豊騎手