横山武史プロ意識 左右両利きで「人と違うこと」

デビュー4年目の若武者がさらなる飛躍へ! 今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」は関東の若手、横山武史騎手(21=鈴木伸)に注目した。4月にウインマリリン(牝3、手塚)でフローラSを制してJRA重賞初制覇を果たし、5月には一時、関東リーディング首位に立つなど活躍が目立つ。右利きながら左手を鍛え、レースに生かそうとする。今週から函館で騎乗。勝利を重ねていく。

今週から戦いの場を函館に移す。横山武騎手は8日現在、今年JRA31勝で全国リーディング12位(関東3位)。騎乗停止が明けた先週6日は、ウインアグライアで東京の最初の2歳新馬戦を勝った。5月3日から23日まで約3週間、関東リーディングの首位にいた。「周りの支えです。たくさん、いい馬に乗せていただいている」と周囲への感謝を忘れない。デビュー4年目で勝利数が関東トップになったことは他の若手、ベテランの刺激になる。それでも謙虚だ。「もっともっと勝てたレースがあったし、満足はしていない」。

昨年2月、騎乗を続けた小倉開催から利き腕の右とは反対の手ではしを持ち始めた。左手を使うことによって右脳が鍛えられると言われる。その部分は潜在意識とつながり、直感、ひらめきなどをつかさどる。「競馬は一瞬の判断が鍵」と言う。スタート後や道中の位置取り、仕掛けるタイミング、直線でどの進路を取るのか。瞬時の判断が勝敗を分けるケースがある。レースで右脳が自然と働いて騎乗できれば・・・。そんな強い思いを持った。

最初は苦戦の連続だった。はしでご飯をうまく食べられなかったが、今は右手とさほど変わらない。「左手でボウリングの球を投げられる」と胸を張る。右手でスコア200をマークする腕前は「左手で130~140」のスコアを出す。メジャーリーグ、エンゼルス大谷翔平に刺激を受ける。「野球は詳しいわけじゃないけど、野球一筋という感じ。トップに行く人はそれぐらいの人じゃないといけないのかな」。ストイックなまでに競技に打ち込む姿は、同じプロとしての手本。左手を鍛えたのは「人と違うこと」をするためだ。他の騎手と同じでは上には行けない、と自覚する。

「それがG1を勝つことにつながるかどうかは分からない」と話すが、現状に満足しない向上心は、いつか報われる日が来るかもしれない。31勝は自己最多のJRA54勝を挙げた昨年を上回るペース。「去年の数字は上回りたいですね。上回るためには、もっと人の信頼を得たい」。北の大地でも、21歳の若武者から目が離せない。

◆横山武史(よこやま・たけし)1998年(平10)12月22日、茨城県生まれ。美浦・鈴木伸厩舎所属。初騎乗は17年3月4日の中山1Rルーナデラセーラー7着。初勝利は同4月16日福島9Rヒルノサルバドール。JRA通算2030戦133勝(重賞1勝)。昨年のダービー(リオンリオン)でG1初騎乗。161.6センチ、45.3キロ。父・典弘、兄・和生もJRA騎手。

昨年、穴を連発した函館に今年も参戦する横山武騎手
昨年、穴を連発した函館に今年も参戦する横山武騎手