馬のランニングマシンに乗ったら・・・やっぱり速かった

馬にもランニングマシンがある。トレッドミルという優れたマシンで、北海道の牧場や本州の外厩、放牧先の多くで導入され活用されている。今では調教メニューの1つとして大きな役割を果たし、その秘密に迫った。また社台ファーム(北海道千歳市)でトレッドミルに乗ってみた。体験して感じたのは、馬のスピードはやっぱり速い!【取材=久野朗】

社台ファームには、厩舎と厩舎の間にポツンと小屋が立っている場所がある。シャッターを開けると、トレッドミルがあった。ゴムのロールが自動で動く、馬のランニングマシンだ。同ファーム事務局の青田力也氏は「休養馬の立ち上げなど、使い勝手がいいですね」と言う。ケガが癒えた馬の調教開始や、人を乗せずに走ることができるため、背腰に不安のある馬にはうってつけだ。

社台ファームが初めて導入したのが3年前の春。青田氏は「他のところでこれを使っている専門家の話や、オーストラリアの厩舎で成功しているところがあった」と、いきさつを説明する。休養馬だけでなく、通常メニューの馬もメリハリをつける意味で、トレッドミルで調整する。騎乗スタッフがケガなどで足りなくなった場合もカバーできる。当初手探りだったのが、今では調教の大きな役割を担う。同ファームには現在、9台設置されている。

最大時速は50キロ。社台ファームでは、そこまでスピードは出さないが、加藤敏男厩舎長は「(時速)20キロで軽いエクササイズ。キャンターは26~30キロで一般的な負荷がかかる。30キロ以上だと速めキャンターになる」と話した。運動できるスペースは1頭だけ。馬にとってはかなり狭い場所でも「ゲート練習にもなる」(同厩舎長)。傾斜は6度(勾配10・5%)までつけられ、坂路調教に似たトレーニングも可能だ。

加藤厩舎長 乗ってみますか?

そう言われて断れないのが記者魂!? 早速“試乗”してみた。傾斜なしで馬の常歩(なみあし)程度、時速6キロに設定してもらった。一定速度で動き続けるため、早歩きではついていけない。軽いランニングの感覚だ。ただ、少しでも気を抜くと後退してしまう。

ほんの1~2分の体験だが、体は少し熱を帯びていた。「馬は速いのが分かったのではないですか」。加藤厩舎長の言葉に納得だ。

トレッドミルの横にある機器には時速、走行距離が表示され、意図的に設定できる。多くの馬が運動に際し、心拍数や乳酸値を測る。調教スタッフは、その数値と馬の状態を確認しながらデータを基に何分で何キロを走るといった、具体的なメニューを組む。ただ狭いスペース、機械の音を嫌がる馬はいる。加藤厩舎長は「絶対やらなければいけないものではない。そういう馬は人を乗せればいい」。欠かせぬ調教手段になりつつあるが、ケース・バイ・ケース。馬の体調や好みなど、見極めも大切になっている。

社台ファームにあるトレッドミルで時速6キロを試走する久野朗記者
社台ファームにあるトレッドミルで時速6キロを試走する久野朗記者