JRA、暑すぎる夏への対策は 分割開催など人馬の安全を最優先したレース施行を模索
暑すぎる夏への策は-。今回の「ケイバラプソディー~楽しい競馬~」は、東京・松田直樹記者がJRAの新たな暑熱対策の導入までの過程などに触れる。酷暑の時間帯を避けた夏季の競馬開催プランや、JRAは人馬の安全を最優先にレース施行に努めている。
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今年3月、JRAより新たな暑熱対策導入の説明があった。夏季の2場開催時期において、北海道以外の開催場で分割開催を取り入れるというもの。1Rを9時半頃開始。5Rを11時半頃に終え、6R以降を15時頃に再開。日没前の18時半に12Rを迎えるプランだ。馬の福祉面から酷暑帯のレースを避ける目的で、現実的には夏の新潟開催となるが、期間などの詳細は今月中旬の発表を待っている。
夏はどこにいても暑い。今年の新潟は8月全日で熱中症警戒アラートが発令された。JRAとしても13年から装鞍所の集合時間繰り下げ、パドックの周回時間短縮やミスト設置と対策を講じてきたが、それすらも追いつかなくなってきた。
JRAによると、気温上昇があっても、年平均で熱中症の馬は40頭ほどと増加なく推移しているという。とはいえ、さらなる対策は必要だった。20年頃に気温や湿度などを基にした熱中症リスクを示す暑さ指数、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)が高い時間帯の開催を避ける議論が始まった。
夜間を含めたあらゆる開催方式の検討を開始し、わずか2年ほどで今回の発表に至った。コロナ禍でもそうであったように競走体系への影響を考え、大前提は安定的な毎週のレース施行を守ること。「暑さに弱い馬を対象にお客さまに提供するスポーツということもあるので、何よりも重要な課題として取り組んでいきたい」(JRA担当者)。もろもろのコスト増が想定される中でこのスピード感はすごいと感じた。
JRAの担当者は「この10年間、競走実施に関わる全ての部門で議論を重ねながら、ハード・ソフトの両面からの対策を進めてきた。今後も気温上昇が見込まれており、完成形というものがあるかは分からないが、人馬の安全を最優先に毎週の競馬を円滑に施行できるよう努力したい」と話した。度が過ぎた暑さの際は開催可否の判断基準に第三者の専門家の意見を取り入れることも必要だろうが、個人的には香港や米国などにならって出走に際し、レース当日に獣医師の検査を入れるのも手だと思う。検証を重ね、人馬の福祉が保たれた競馬が行われていくことを願う。
(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)