高松宮記念に6年ぶりに外国馬が参戦、ビクターザウィナーは要注意の存在です

3月24日(日曜)に行われる高松宮記念(G1、芝1200メートル、中京)に参戦する香港のビクターザウィナー(セン6、父トロナド、C・S・シャム厩舎)が12日に成田空港に到着しました。今年の出走予定馬の中でG1ウイナーはママコチャとシャンパンカラー、それにビクターザウィナーの3頭だけ。15年のエアロヴェロシティに続く快挙が期待される“刺客”の横顔を紹介しましょう。

18年にこのレースに参戦したブリザード(5着)以来の来日となるビクターザウイナーはオーストラリア産の去勢馬です。父はサドラーズウェルズ系のトロナド(その父ハイシャパラル)、母ノエティックは欧州名マイラーのケープクロスの娘で、自身は芝1000メートルで勝ち鞍のある快速馬でした。ノエティックは22年まで6頭の産駒をもうけていて、ビクターザウイナーの2歳上の全姉インテレクティヴはオーストラリアで芝1400メートルから1600メートルで5勝を挙げています。注目すべきは父のトロナドで、その産駒は香港4歳3冠に王手をかけているヘリオスエクスプレスや、条件馬ながら1200メートル戦で6勝を重ねるトロナドファントムなどが近年の香港競馬で素晴らしい活躍を見せています。

20年のオーストラリア・イングリス・メルボルンセールに上場されたビクターザウィナーは、現オーナーのユン・ロン・チュウ氏を代表とするグループに18万豪ドル(約1790万円)で落札されて香港に運ばれ、安田記念参戦を予定するロマンチックウォリアーなどを管理するダニー・シャム(C・S・シャム)厩舎に入厩しました。

デビューは一昨年9月のシャティン競馬場の芝1200メートル戦。ここを2着馬に3馬身4分の1差をつけて逃げ切ると3戦目に2勝目を挙げました。この時の勝ちタイムの1分08秒11が、彼のベストタイムです。5戦目から条件戦を3連勝して臨んだシャティンヴァーズ(G3、芝1200メートル)はサイトサクセスにハナをたたかれて2番手からの競馬になりましたが、途中で先頭に立って見せ場を作り、のちに香港短距離王に輝くラッキースワイネスに1馬身4分の1差の2着に健闘。このシーズンを8戦5勝、2着1回で終えました。

昨年9月に始まった23/24年シーズンからはオープン馬として本格的に重賞戦線に進出。重賞ではありませんでしたが、シーズン開幕デーのメイン競走として行われた香港行政庁官賞では主導権を握ってラッキースワイネスに2馬身半差をつけて優勝、通算6勝目を挙げました。しかし、その後は相手強化もあって4連敗。11月のG2ジョッキークラブスプリントでは宿敵ラッキースワイネスの首差2着したものの、初のG1挑戦となった香港スプリントでは、日本から参戦したジャスパークローネにハナをたたかれて2番手追走を余儀なくされ、勝ったラッキースワイネスに2馬身差の4着。1月のG3バウヒニアスプリントトロフィーではデビュー以来初となる直線競馬(芝1000メートル戦)が試されましたが、あまり合っていなかったようで9頭立ての7着に終わりました。

結果を出せずにいたことでファンの信頼を失ったビクターザウイナーでしたが、13頭立ての7番人気(単勝38・7倍)で出走した1月28日のG1センテナリースプリントカップでは、初コンビとなったデレク・リョン騎手を鞍上にロケットスタートを決めて、直線もセーフティーリードを保ったままゴールに飛び込み、待望のG1タイトルをつかみました。

香港レーティングはマイルのゴールデンシックスティ(133)、短距離のラッキースワイネス(132)、中距離のロマンチックウォリアー(132)が、トップ3となっていますが、ビクターザウィナー(124)は短距離部門でラッキースワイネスに次ぐ2番手として高い評価を得ています。ここまでの14戦(うち1戦は直線競馬)はすべて右回りのシャティン競馬場ですが、シャム調教師は左回りも克服できると自信をのぞかせています。これまでの好結果は主導権を握ることが条件でしたが、日本へ旅立つ1週前の3月5日に行われたバリアトライアル(実戦形式の調教)では、リョン騎手があえて逃げ馬の直後に馬を置いて我慢させ、抜け出す特訓を試みて手応えをつかんでいます。

課題はウインカーネリアンを筆頭とする同型馬との兼ね合いですが、馬券に絡むだけの能力は十分に認められるように思えます。(ターフライター奥野庸介)

※競走成績などは2024年3月15日現在

香港に行ってきました!
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