天才デットーリが日本で騎乗、日本人騎手にも刺激

こんにちは。7月30日のディープインパクトの訃報に続き、日本が誇る代表的種牡馬キングカメハメハが9日に亡くなり、日本競馬界では毎週のように悲しいニュースが続いています。その一方で、秋の競馬がとても楽しみになる話題が舞い込んできました。ここ数年世界で最も熱い騎手であり、競馬界きっての天才と称されるフランキー・デットーリ騎手が、今秋日本での短期免許を取得するというものです。

デットーリ騎手のすごさは、最近競馬を始めた方にとってはピンと来ないと思うので、私が考える彼のすごさ、偉大さについてお話ししたいと思います。

近年の日本では海外騎手といえばムーア騎手やモレイラ騎手の存在が圧倒的ですが、その2人から見てもデットーリ騎手のことは天才といえると思います。彼のすごい点は、どれほどの人気馬に乗ってもプレッシャーを感じていないかのように大胆に騎乗し、大レースになればなるほど結果を出すことができる精神力です。

技術的な部分では、手足の長さを生かした迫力ある騎乗フォームが特徴的です。最近、日本ではムーア騎手やマーフィー騎手のような体を動かして馬を動かす「ヨーロッパスタイル」の騎乗フォームが若手騎手を中心に人気になっています。一方で、同じヨーロッパの中でもペリエ騎手やルメール騎手のように身体をあまり動かさない「アメリカンスタイル」のフォームで乗る方法もあり、デットーリ騎手はその2つの騎乗フォームを融合させたようなスタイルです。馬を追う時はあまり体を動かさないようにしながらも、足と腕で力強く追うフォームは彼ならではの騎乗スタイルだと思います。日本ではデットーリ騎手と年齢の近い武豊騎手や横山典騎手が同じようなスタイルで騎乗していると感じます。

デットーリ騎手はジャパンCを異なる欧州の馬で3度制覇している唯一の騎手です。そのうち1回は東京競馬場が改修中のため中山競馬場で開催された年で、同週のジャパンCダートも制しました。

デットーリ騎手がシングスピールで初めてジャパンCを勝った時、私は東京競馬場で観戦していました。その時の印象が強く残り、のちにイギリスに渡り馬の修業をするきっかけとなりました。デットーリ騎手が当時所属していたゴスデン厩舎に就職し、調教に乗りに来るデットーリ騎手を初めて見た時は、本当に感動しました。そして、自分の担当馬に彼が騎乗した時、感激のあまり手が震えたことを今でも覚えています。

この秋、円熟期のデットーリ騎手を日本のファンの皆様が毎週のように生観戦出来ることは、とてもぜいたくなことだと思います。そして、今の日本の若い騎手にとっても、彼と一緒に騎乗するということは、とても貴重な経験になると思います。また、デットーリ騎手と同世代の武豊騎手、横山典騎手らが刺激を受け、すごく活躍する予感がしています(笑い)。今年の秋のG1戦線では、世界のトップジョッキーと日本人騎手とのプライドのぶつかり合いにも注目してみて下さい。(レースホースコーディネーター)

デットーリ騎手の師匠であるゴスデン師(左)とパチリ。真ん中は私です
デットーリ騎手の師匠であるゴスデン師(左)とパチリ。真ん中は私です
“キングジョージ”を制したエネイブルとデットーリ騎手
“キングジョージ”を制したエネイブルとデットーリ騎手