“天才”武豊、香港Cエイシンヒカリでみせた技巧

こんにちは。先週はフランスで日本馬とコンビを組んだ武豊騎手の勝利が見られなかったことがとても残念でした。

武豊騎手のJRA通算4000勝のカウントダウンが始まっています。実際のところ、(JRA所属馬による中央、地方、海外を含む)国内外での勝利数を合計すると4174勝とすでに4000勝を超えています。これは世界的に見ても超一流ジョッキーの領域であり、日本が誇る「天才」であり続けている証明だと思います。

これまでJRAのみで積み重ねてきた3996の勝利のうち、329勝が重賞であり、うち75勝がG1レースです。それ以外でも、国内外のカテゴリーで加算されている勝利数の中に含まれるのは、地方交流G1は31勝、海外のG1レースは10勝、トータルで116勝の勝利があります。数字だけですごさが伝わりますが、武豊騎手のすごさとは一体何なのか、私個人の意見と経験をお話ししたいと思います。

2015年の香港カップでエイシンヒカリに騎乗して勝利した時のことです。スタート直後から、武豊騎手独特のスタイルでもある超長い手綱で、暴走気味に見せながら、1コーナーへオーバースピードで入っていく様子はムーア騎手、モレイラ騎手、パートン騎手などのトップジョッキーたちのレースペースを惑わせました。かなり早いペースと思わせながら3コーナーまで進み、他の馬が実はペースが平均ペースであり先行馬有利の展開と気付いた時には時すでに遅しとなり、直線であっという間に後続を突き放します。

レース後、どの騎手もコメントの中で武豊騎手がつくったペースにはまってしまったと称賛の嵐でした。外から見ると、ペースなんて簡単に分かるだろうと考える方もいるかもしれませんが、一流ジョッキーがそろって惑わされたこのテクニックこそ、魔術師であり天才であるゆえんだと思います。

また、この勝利が武豊騎手にとってなじみのある日本の競馬場ではなく、海外のビッグレースであることを考えると、国や競馬場を問わずこのようなパフォーマンスが出来ることのすごさも感じていただけると思います。

今後はどこまで記録を伸ばし続けてくれるか楽しみですが、まずは、目の前の4000勝を凱旋門賞に行く前に達成してもらい、日本馬とのコンビでぜひ凱旋門賞勝利を達成してもらいたいです。(レースホースコーディネーター)

15年暮れの香港C、レース直後のエイシンヒカリ(2015年12月13日撮影)
15年暮れの香港C、レース直後のエイシンヒカリ(2015年12月13日撮影)