根性娘ミヤマザクラの逆襲ある/オークス

オークスでデアリングタクトの2冠はあるのか? 道悪の桜花賞を圧倒的な強さで制したが、今度は高速馬場の2400メートルに条件が替わる。桜敗退組の巻き返しが怖い。水島晴之の「前哨戦その一瞬」は、桜5着のミヤマザクラ(藤原英)に注目する。いったん後退して盛り返した脚力に、G1級の底力を感じた。

桜花賞で5着と健闘したミヤマザクラ(右端)。中央は勝ったデアリングタクト
桜花賞で5着と健闘したミヤマザクラ(右端)。中央は勝ったデアリングタクト

ミヤマザクラG1級底力

桜花賞の勝ち時計は1分36秒1だった。前年の勝ち馬グランアレグリアの1分32秒7(良)と比較すると3秒以上遅い。発表は重だが、実際には不良に近いコンディション。道悪の巧拙が着順に反映したといっていい。しかも、逃げたスマイルカナの前半3ハロン34秒9は、馬場を考えればかなり速い。前もきついが後ろも引っ張られてスタミナを消耗する。ラスト200メートルのレースラップが13秒8かかっても先行馬が残ったのは、後続がなし崩しに脚を使わされた証拠だ。

この悪条件の中、上位馬で一番、道悪の影響を受けたのが、ミヤマザクラだろう。前半は2番手レシステンシアの後ろ4、5番手につけたが、800メートル付近で手応えが怪しくなり、4角では8番手に後退した。福永騎手が「ずっとノメっていた」と話したように、跳びが大きくてきれいな同馬は余計にこたえた。精神的にもきつく、普通なら戦意喪失してもおかしくない。

直線だけで5着まで盛り返したのは、能力の高さと困難に立ち向かえる根性があったから。坂で9着エーポスと馬体を並べると、もう1度息を吹き返し、サンクテュエール(6着)、マルターズディオサ(8着)を逆転した。デアリングタクトとは脚が違ったが、後方でためた勝ち馬より、前半から出していった分、タフな競馬をしていた。あの0秒8差は逆転できる。

ここ2戦は桜花賞へ向けてマイルを使ったが、新馬は札幌芝1800メートル。2戦目の未勝利勝ちは、札幌芝2000メートルの2歳レコード(2分2秒1)だった。陣営はクイーンCで東京も経験させており、はなからオークス向きとみていたのではないか。折り合いに不安はなく、2400メートルへの距離延長も問題ない。条件替わりで、ミヤマザクラが一変した走りを見せる可能性はある。

デアリングタクト切れすぎる脚は「もろ刃の剣」

<桜花賞>

デアリングタクトの末脚は、道悪でも鈍らなかった。向正面でごちゃつくのを避け、馬を信じてポジションを下げた松山騎手の好騎乗も光る。それにしても、重馬場のハイペースで36秒6の末脚を繰り出すとは驚いた。良馬場ならハロン10秒台の瞬発力があり、重巧者ではない。高速馬場ならもっと楽に勝てていただろう。ただ、あまりに切れすぎるのが「もろ刃の剣」。2400メートルが鍵になる。3着スマイルカナは、マイペースの逃げに持ち込めたのが大きい。自分の形なら少々流れが速くてもばてない。距離延びて展開は楽になる。4着クラヴァシュドールは、勝負どころで狭くなるシーンがあった。スムーズなら、もっと際どい競馬になっていた。レース運びが上手で、条件替わりでも崩れはなさそう。8着マルターズディオサは少し力んでいた。スムーズに追走できるかどうかだ。

デゼルしまいだけで勝負できる馬

<スイートピーS>

デゼルが外から上がり32秒5で突き抜けた。キャリア1戦でこの強さ。ポテンシャルは桜花賞組と比較しても遜色ない。スタートが遅く、多頭数で流れに乗れるか不安もあるが、あれだけの脚があれば下手に出なくてもいい。しまいだけで勝負できる。父ディープ、母アヴニールセルタンはフランスの2冠牝馬。血統的期待も大きく、3戦目の戴冠も十分ある。

ウインマリリン競馬が上手で勝負根性ある

<フローラS>

ウインマリリンが、好位から鋭く伸びた。東京2000メートル1分58秒7も優秀。それほど切れる脚はないが、競馬が上手で勝負根性もある。2400メートルもプラスだ。2着ホウオウピースフルは、馬混みで掛かって頭を上げるシーンもあったが、それでも狭いところを割ってきた。能力はあるが、折り合いという課題が出た。平常心で走れるかがポイントになる。